マルチスクリーン型放送研究会(マル研)は、2015年1月1日~3月8日にかけて取り組んだビジネストライアルについて、その結果と分析などを「Connected Media Tokyo 2015」(2015年6月10~12日開催)のセミナーで、テレビ大阪の西井正信氏が報告した。マル研はSyncCastの進化版として、「同時10万台接続に耐えるサーバー環境」「主要システムの冗長化」「ネット番組対応」「他アプリのブロック内からの起動」などを取り込んだVer.2を開発し、ビジネストライアルに臨んだ。期間中に41放送局がのべ163番組を放送した。

 視聴者アンケート(895サンプル)からは、使ってみた印象について「便利」「面白い」「今後も使ってみたい」などの回答がいずれも300を超え、好意的な意見が多数を占める結果だった。「もうひと工夫がほしい」といった回答は150程度にとどまった。「友人に勧めたいか」という質問にも87%から「yes」という回答を得た。利用した視聴者の評価は、概ね好評だったといえそうだ。

 一方、トライアル終了後に行ったマル研会員の放送事業者への調査(回答は52)によると、参加局(48%)のうち11%が「売り上げにつながった」と回答、「今回はつながらなかったが可能性はありそう」という74%を含め、85%が手ごたえをつかんだという結果だった。一方で、参加しなかった局(残りの52%)にその理由を聞いたところ、「社内調整」が46%、「適当な番組がない」が20%など、多くが局内の事情による不参加だった。

 今後の実用化に向けた課題として、第一に挙げたのが「SyncCastコンテンツ」の開発である。「番組ホームページの作成に近いのだが、番組のメタデータを集めて編集して、番組の演出をしていく必要がある」という。放送局は、番組を作るのは得意だが、こうした別のノウハウを蓄積していく必要があるとした。また、コンテンツの種類としては、ニュースや天気、占いなど番組非連動のものも必要と指摘した。

 周知・広報に向けては、放送の力の活用(出演者による説明)、習慣性(レギュラー番組での実施)、相乗効果(エリア共同キャンペーン)が必要とした。さらに、編成/制作セクションへの説明といった社内調整の重要性、スポンサーへの説明にはSyncCast理解者が熱意をもって行うことの必要性を強調した。