広告主が投入した広告がターゲットにどれだけリーチし、どういった反応を起こしているのか──。ネットの世界では当たり前のように、リアルタイムに近い形で広告主がデジタル広告の成果を状況把握するためのツールがどんどん誕生し進化している。いよいよ、テレビCMでも同様のアプローチが可能になってきた。例えばマーケティングデータ統合・分析プラットフォームとして各種デジタル広告の関連データを集計してグラフや表で可視化するBIツール「Datorama」を提供するDatorama Japanは、2017年5月にインテージのテレビ視聴ログデータを含むシングルソースパネル(i-SSP)との接続を開始した。広告主は、ネットと放送をクロスチャネルで、ほぼリアルタイムで進捗を追い、広告投入の最適化を随時図れる。Datorama Japanの石戸亮氏、インテージの小金悦美氏、エム・データの薄井司氏に話しを聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中 正晴)

左から、インテージ 特命主幹の小金悦美氏、Datorama Japan セールスディレクター /ビジネスデベロップメントの石戸亮氏、エム・データ 戦略企画の薄井司氏。
左から、インテージ 特命主幹の小金悦美氏、Datorama Japan セールスディレクター /ビジネスデベロップメントの石戸亮氏、エム・データ 戦略企画の薄井司氏。

Datoramaにとって放送の位置づけは。

石戸  Datoramaにはマーケティングのあらゆる種類の全量データを統合して、MI(マーケティング・インテリジェンス)を提供できるという強みがある。これまでのBIツールでは、デジタル系のマーケティングデータの統合が困難だったため、Datoramaに統合したデータは結果的にデジタルが多くなったが、我々としてはテレビ放送も統合しようと考えていた。とはいえ昨年の今頃は、できたらいいねと話はしていた状況だった。その後インテージやエム・データとの出会いがあり、一気に形になってきた。まずは、インテージのテレビ視聴ログデータを含むシングルソースパネル(i-SSP)から連携が始まり、その後、SRI(全国小売店パネル調査)およびSCI(全国消費者パネル調査)、Media Gauge TV(スマートテレビ視聴データ)のデータ連携を開始した。Datorama上で、テレビCMの出稿状況を確認し、POSデータなどの反応を確認できるようなことが実現できるとは、1年前は思ってもいなかった。

小金  i-SSPは、同一対象者からパソコン・スマホのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関するデータを収集、同一対象者から収集している購買データと併せて分析することで消費行動と情報接触の関係性や広告の効果を明らかにすることが可能となる。当社「INTAGE connect」経由でDatoramaとの連携を可能とすることで、広告主においてデジタルと放送の一元管理が可能になり、メディア配分の最適化に貢献できると考えた。

石戸  広告主からすると、デジタルも重要ではあるが、広告投資を積極的に行っている会社の多くにとって、その投資規模は例えば5%~10%程度に過ぎず、半分以上がテレビCMという現実があった。テレビとデジタルの広告状況を同じ画面に表示できるようにしたいというオファーはあったし、いよいよ先進ユーザーの中からは、テレビとデジタルの両方のデータを入力して、マーケティング投資全体の最適化に動き出す事例が出だした。

i-SSPのデータは以前から提供してきた。

小金  視聴ログを含むi-SSPは、一定期間データがたまったタイミングで、当社の顧客にエクセルやパワーポイントの形でデータを提出する形で提供する運用してきた。しかし、当社内ではリアルタイムでデータを蓄積している。Datoramaと連携、手段を得たので、デイリー更新の対応を2017年5月に始めた。

薄井  当社のTVメタデータによりCM出稿量や番組での露出量が回数や秒数で捉えられ、自社の露出だけでなく競合他社の出稿戦略や番組PR、業界トレンドなどが、Datorama上でウォッチできる。これがi-SSPと連携することで、CMや番組への接触状況から購買行動までをシングルソースで把握できるようになった。さらに、Datoramaを経由して入ってくる様々なデータを加えることでスピーディーな効果検証ができるようになる。これまでは、テレビを含めたオフライン施策の効果検証だけが分断し、評価が難しかった。Datorama上でインテージ提供データを活用することでそれが可能になってきたことは大きい。

小金  ROI(費用対効果)意識が高まってきたという中で、そもそもいっぱいお金を使っている広告のROIをしっかり計測しているのかが、ここ数年多くの企業で経営課題になってきたと感じる。そうした中、デジタル広告の可視化ができている中で、テレビ放送の広告効果の見える化に対するニーズが高まっていた。