NTTぷららは、NTTドコモが来年から提供する「ひかりTV for docomo」に対してひかりTVサービスを卸提供する。これによって、NTTぷららは、ひかりTVの強力な販路を新たに得ることになる。NTTぷらら代表取締役社長の板東浩二氏に、同サービスを卸提供する狙い、動画配信サービスの現状に対する認識を聞いた。

(聞き手は本誌編集長、田中 正晴)

ひかりTVにとって、NTTドコモと組んだ意義は。

板東  もともとひかりTVは、2008年3月末に開始したNGNのキラーサービスとしてスタート、来年3月で10年になる。この間、NTT東西が光回線を販売したときに、ひかりTVを売ってもらったり、我々がテレマーケティングを展開したりすりなど、一生懸命販売活動を行ってきた。この結果、伸びているときには年間50万、60万といった単位で契約数が増加していた。しかし、既存の販売ルート・チャンネルでは、映像を見たいという人にほぼ行きわたり、近年は契約数が300万件を超えて以降、ほぼ横ばいの状況が続いている。このため今後の成長に向けては、新しい販売チャンネルを立ち上げたり、販路の拡大を進める必要があった。

 その本格的な第一弾として、ケーブルテレビ事業者に「ひかりTV with CATV」モデルを提案、ひかりTVを販売してもらう形で複数の事業者と提携した。NTTドコモに対する卸提供も、こうした取り組みの一環である。

NTTドコモに卸提供したということだが、どういう形態なのか。

板東  光コラボを推進するNTTドコモでも、これまでひかりTVを販売してもらっていた。今回の「ひかりTV for docomo」では、NTTドコモ自身のサービスという位置づけで、ドコモ光と一緒に販売できる映像系のキラーコンテンツとして販売できる形となった。

 このサービスで専門チャンネルは、当社の子会社である株式会社アイキャストが調達して提供する。ひかりTVと全く同じである。VODについては、NTTドコモが提供しているdTVのコンテンツと、dTVにない当社のコンテンツを組み合わせて使い放題にする。また、個別課金の5万本の多くは、当社が提供する。2018年1月に開始するdTVチャンネルも一緒に使えるが、dTVチャンネルも、我々(アイキャスト)が番組を集めて、我々のプラットフォームで番組を配信する。つまり、ひかりTVをNTTドコモ向けにカスタマイズしたのが、「ひかりTV for docomo」と考えてもらえればいい。

ビジネスモデルとしてはどういう形態なのか。

板東  あまり詳しくいえないが、レベニューシェアだと考えてもらえればいい。

こうした卸提供の横展開は。

板東  ひかりTVの拡販につながるので、希望があれば我々としても積極的に対応したい。光回線のコラボ事業者も対象になる。当社は販路の拡大に向けてキャリアフリー化も進めており、独自の光回線を展開する事業者とも具体的に話しを進めている。

ケーブルテレビはどうか。

板東  「with CATV」モデルでは、ひかりTVを販売代理してもらう形で展開してきたが、これもコミチャン対応や画面など、一部をケーブルテレビ用にカスタマイズしていた。今後は、今回のような卸提供というモデルもありうると想定している。きっかけやタイミング次第ではないか。さらにはISP事業者に対して、サービスを卸していくことになるかもしれない。

「ひかりTV for docomo」では、Android TVベースの新STBが投入される。ひかりTVとの関係は。

板東  プラットフォームと端末は一体である。NTTドコモが発表した新STBは当社との共同開発で、インタフェースは当社のプラットフォームに合わせている。また、実際の開発や生産の発注は当社で実施している。インタフェースを開示して、卸先事業者が独自に端末を開発できるようにすることは考えていない。

「ひかりTV for docomo」が非常に魅力的な一方で、ひかりTVはどうなるのか。

板東  我々は、ひかりTVとして、コンンテンツを調達したり4K制作したりしてサービスを作るところから、プラットフォームを通して、STB経由でテレビに、あるいはマルチデバイスに配信していく。この基本は、販売手法が変わっても同じである。ただ、提供先に合わせてカスタマイズする中で、少しずつ違うものになっている。「ひかりTV for docomo」は、VODの本数が少し増えたり、追加料金なしでdTVやdTVチャンネルが利用できる。一方で、このサービスに卸したのは映像サービスのみである。ひかりTVで提供するクラウドゲーム、音楽配信、コミュニティ、電子書籍などは、いまのところない。一長一短がある。

 今後、カスタム提供する先に応じて、提供するサービスも変わるかもしれない。細かい点でいえば、料金回収や販売促進、ユーザー管理・サポートなども組み方次第で仕組みは異なるだろう。しかし、我々から見れば全部ひかりTVであることにかわりない。これからも、ひかりTVのサービス・プラットフォームのより一層の充実に力を注いでいく。