2014年11月上旬、米独立系のリサーチ会社、フォレスター・リサーチが、「企業の年間デジタル広告費用は、あと2年でテレビ広告費用を上回り、5年後には1030億ドル(約11.8兆円)に達し、全ての広告費用の36%を占めるようになるだろう」という予測を発表した。

 デジタル広告がテレビ広告を上回る。この数字だけを見ると、インターネットがテレビに取って代わったようにも思えるが、必ずしもそうではない。数値を細かく見ると、テレビ広告に対する投資はそれほど変わっておらず、デジタル広告に対する投資が急増している。つまり今後増えると予測される広告費の多くが、デジタル広告に積極的に投下されるだろうと予測されているのだ。

 デジタル広告に対する投資が伸びると予測された背景には「デジタルマーケティングがビジネスに何らかの形で効果をもたらすと証明できるようになるから」という仮説がある。これはデジタル広告の効果測定方法や技術の進化だけでなく、広告配信技術そのものの向上も影響している。

 特に「プログラマティック・バイイング(データに基づき、広告枠を自動かつリアルタイムに買い付けるシステム。運用型広告とも呼ばれる)」の技術向上と、その広告枠の増加が与えるインパクトは大きい。

 同技術の向上によって広告配信の精度が高まれば、投資した広告費用に対する効果を高められる。より高い広告効果が得られるのなら、その広告に多額の広告費用が投下される。多額の広告費用が投下されれば、広告枠自体も増加する。そして、広告枠が増加すれば、広告に接触するユーザーも増加し、さらに自動かつリアルタイムに買い付けるためのデータもより精緻化される。データが精緻化されれば、ますます広告配信の精度が向上する。

 この流れが繰り返されることで、デジタル広告市場は雪だるま式に大きくなると予測されている。つまりデジタル広告技術の進化が、市場の拡大を強力に後押しするという見方だ。