本連載ではこれまで、「ソーシャルメディアは企業のマーケティング活動にとって有効なものになり得るか」というテーマについて考察を重ねてきた。少なくとも、現在発表されている数々のレポートを読む限り、企業にとってソーシャルメディアは、「消費者を購買に結び付けるもの」という位置付けではなくなっているようだ。それよりも、企業は自分たちの製品やサービスの「認知」を拡げるため、または消費者のために購買に際して必要な情報を提供するものとしてソーシャルメディアを位置付け始めている。

 その位置付けは、本当に正しいものなのだろうか。その問いに対する回答ともいえる調査結果を、2014年9月に仏Capgemini社が発表した。「Digital Shopper Relevancy」と題されたこのレポートは、2年前から毎年実施されており、日本を含む18カ国から、約1万8000人の消費者を対象に実施した調査がまとめられている。その2014年版では、ソーシャルメディアは「Over-hyped(過剰に宣伝されたもの)」と評されている。

 これは消費者が自らの購買行動の中で、ソーシャルメディアをさほど重要なものとして考えなくなり始めている、という調査結果を受けている。本レポートを読み込んでいくと、消費者は2年前と比べて、商品・サービスの認知からポストセールスにいたるまでの自分たちの購買行動の中で、ソーシャルメディアを重要視しなくなっている。この傾向は、食料品やアパレル、あるいは家電など、製品やサービスのカテゴリーを問わず見られている。

 今回の調査では、「店頭」「店内の情報端末」「Webサイト」「スマートフォン(モバイルサイトやアプリ)」「メール(メールマガジンなど)」「ソーシャルメディア」、そして「電話(コールセンターなど)」の7項目を対象に、消費者が自分たちの購買行動で重要視している接点を5段階で評価した結果をまとめた。その中で最も評価が高いのが店頭で、Webサイトがそれに続いた。消費者の多くはこの二つの接点を非常に重視しており、重要度は2012年に比べて高まっている。

 この2年間で、消費者による重要度評価が最も高まったのはスマートフォン(モバイルサイトやアプリ)である。その一方で、スマートフォンと親和性が高いと考えられている「ソーシャルメディア」の重要度は、全7種類の接点の中で6番目という結果となった。最も重要度が低いと評価されている電話(コールセンターなど)をわずかに上回った程度であり、評価としては非常に低いといえる。