以前から、企業のデジタルマーケティングを成功に導くには、上層部の積極的な関与や協力が不可欠であると言われてきた。企業が新しい試みを推進させる際に、組織づくりや予算確保だけでなく、役員レベルにいる人間が、どれだけ積極的な姿勢を見せるかが問われている。

 例えばデジタルマーケティングに関しては、マーケティング担当役員つまりCMO(Chief Marketing Officer = 最高マーケティング責任者)の存在が重要になる。米国をはじめ海外の企業は、CMOがデジタルマーケティングの位置付けと方向性を決定付け、自ら先頭に立ってそれを推進している。

 ではCMOたちはデジタルマーケティングについて、どう考えているのだろう。2014年8月、米マッキンゼー・アンド・カンパニー、全米マーケティング協会、デューク大学らが米国企業のマーケティング担当役員を対象に年2回実施している「The CMO Survey」の結果を発表した。

 今回の調査では、デジタルマーケティング、特にソーシャルメディアの活用に関する質問が多くなっていた。この答えから、企業のソーシャルメディアマーケティングに対する意識がリアルな形で浮き彫りになった。

 まずデジタルマーケティングに対する予算配分に関して、マーケティング活動全体に対する予算が2010年以降微増(対前年比5%増程度)傾向にとどまる中で、この分野は毎年、対前年比10%増以上の増額を見せている。この傾向は業界や業種、企業規模などに関係なく、これまでと同様にデジタルへの投資は積極的なものとして続いていることがよくわかる。

 特にデータ分析に対する投資は、非常に盛んになるものと予測されている。今後3年でこの分野に対する予算配分は、マーケティング予算の12%を超えるとみられているのだ。現時点でデータ分析に対しては、マーケティング予算の約7%が割り当てられていることを考えると、3年でほぼ倍増するという計算だ。

 ただしデータ分析に対する投資は金銭的には増加しているものの、実際にデータ分析が企業で実践されているとは限らないようだ。これは「データ分析を伴った形で実践されているマーケティング活動の割合」が、2年前に比べてて減少傾向にあることからわかる。

 今回の調査では32%(2年前は37%)という結果になっている。これを言い換えれば、企業のマーケティング活動に関する施策の3分の2以上はデータによる分析がなされていないことになる。