2015年9月1日、動画配信の世界最大手、米ネットフリックスがアジアで初めて日本でサービスを開始した。同社は、これまでに世界50カ国以上、6500万人の会員を集めており、特に北米ではインターネット人口の半数近く(46.4%)が会員となっている巨大サービス。今後も、その成長は止まらないと予測されており、2019年には、会員数は9600万人を超えるのではないかと言われている。また、現在の会員の満足度も非常に高く、米RBC Capital Marketsの調査では、70%以上の会員が「当面(今後3カ月)は退会するつもりは無い」と回答している。

 ネットフリックスのサービスを契約している理由を、米Cowen and Companyが調査したところによると、最も多かったのが「オンデマンド配信サービスの利便性(83%)」というもの。続いて「値段が手頃(67%)」「膨大なコンテンツラインアップ(64%)」そして「端末を選ばずに視聴できる(50%)」と続いている。つまり「お手頃な価格で、膨大な種類と数のコンテンツから、観たい時に観たいものを、観たい端末で観ることができる」といったところが、ネットフリックスの強みとして消費者に認知されている、といえるだろう。

 この強みのベースになっているのが、一人ひとりの会員に対してパーソナライズする「リコメンデーション機能」。このリコメンデーションのベースとなるデータは、単純に会員の属性や趣味嗜好だけではない。例えば、視聴した時間帯や用いたデバイスはもちろんのこと、視聴中に一時停止、巻き戻し、早送り等の操作を行った部分。そして視聴を止めてしまった部分など、視聴行動に関するあらゆるデータがリコメンデーションのための分析対象となっている。

 リコメンデーション機能は、導入に当たって、その精度が非常に問われてくる。リコメンデーションが充実すればするほど、視聴者は、(自分たちにとって)面白そうな作品を見つけやすくなるが、中途半端な精度のリコメンデーションは、むしろ利用者の利便性を損ない、その満足度を下げてしまうことにつながってしまう。そのためネットフリックスは、利用者の視聴行動に関するデータを、少しでも多く集めることで、リコメンデーション精度の向上に役立てている。まさにビッグデータをビジネスに役立てている企業だと言えるだろう。