米プライスウォーターハウスクーパースが、毎年世界各国のCEO(最高経営責任者)を対象に実施している調査「Annual Global CEO Survey」の最新版が、先週発表された。18回目となる今年のテーマは「Marketplace without boundaries(境界なき市場)」。高度に発達したテクノロジーが、これまで市場に存在していた「境界線」を消していることを示している。例えば、今まででは考えられなかったような企業が市場に新規参入することで競争が激化したり、テクノロジーによって全く新しい市場が創出されたりすることで「境界線」が無くなりつつあるという。

 今回のレポートでは、こういった「境界なき市場」で企業が戦っていくためには「デジタルへのシフト」が重要であると提言している。企業のCEOたちは実際のところ、このキーワードに対してどう考えているのだろう。

 まず、「自分たちにとって戦略的に重要と考えているテクノロジー」について「モバイル」「データマイニングと分析」そして「セキュリティ」を挙げたCEOが約8割となっている。本連載では、これまで様々な調査やレポートをひも解いてきたが、ここでも重要となるキーワードは変わらない。特に、ここ1~2年で「データとその分析」の重要性を認識し始めた企業が増えてきている。それは、デジタルに対する投資がもたらす価値として「オペレーションの効率化」と「データとその分析」と回答したCEOが8割を大きく超えていることからも分かるだろう。

 しかし、戦略的に重要であると言われてはいるものの、現実は大きく異なる。むしろまったくと言っていいほどデータが活用されていないのだ。現在、毎年生み出される「デジタルデータ」のうち、約23%は適切な形で管理・分析すれば非常に有効に活用できると言われているが、実際に管理されているデータは全体の3%に過ぎない。そして分析対象になっているデータに至っては、わずか0.5%程度でしかないと言われている。つまり「データ分析が重要である」ということは認識されているにも関わらず、現場が追いついていないのだ。