企業向けにBtoB製品を開発するベンチャー企業は、一般消費者向けにBtoC製品を開発するベンチャー企業と違って注目度が低いせいか、成長のためのノウハウが共有されにくい。2016年10月中旬に行われた「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」のパネルセッションは、そうしたBtoBベンチャー企業向けの数少ないノウハウ共有の場だった。

「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」のパネルセッション
「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」のパネルセッション
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 パネルセッションに登壇したのは、BtoBベンチャー企業3社の代表(KUFUの宮田昇始氏、LeapMindの松田総一氏、サイカの平尾喜昭氏)と、BtoB領域に強いベンチャーキャピタル(VC)であるDraper Nexus Venturesの倉林陽氏、そして、アクセラレーターとしてBtoBベンチャー企業を支援する富士通でマーケティング戦略室シニアディレクター(ベンチャープログラム担当)を務める徳永奈緒美氏である。モデレーターはグリーベンチャーズの堤達生氏が務めた。

「もうかるかどうかの議論は早く無くなれ」

 「BtoBベンチャーはもうかるのか」という堤氏の問いに対して、「BtoBがもうかるか、もうからないかという議論は早く無くなればいい」と言って切り込んだのがDraper Nexusの倉林氏だ。米国ではBtoB領域が一大投資分野となっており、「BtoBはメジャーな領域」(倉林氏)だからである。

 倉林氏が示した資料によると、米国における2015年から2016年のIPO(新規株式公開)では、企業向けコラボレーションツールなどを開発する米アトラシアンが最大規模であり、時価総額は59.8億ドルにも上っている。M&A(合併・買収)では、米シスコシステムズや米オラクル、米セールスフォース・ドットコム、米ベライゾン・コミュニケーションズが積極的で、数億~数十億ドル規模の買収をいくつも仕掛けている。

 倉林氏によると、参入領域としては、セールスマーケティングが主流という。新興企業の最新ツールの活用が既存企業の活性化にもつながっているのだろう。

 起業家視点で、BtoB領域への関心度が低い理由の一つとして挙げられるのが、「一般に設立から上場まで時間がかかる」(KUFUの宮田氏)ことだ。起業家の成功イメージとして、短期間で上場まで駆け上がる姿を想像しがちなのだろう。