「技術的な課題はほぼ解決しているが、利益化に苦労している人や組織は少なくないのではないか」「(IoTの導入で)利益が相反する組織同士が課題を克服し、成功した例は見当たらない」――。アビームコンサルティング執行役員の赤石朗 プロセス&テクノロジービジネスユニット長は、IoTの利用状況にこう疑問を呈する。

アビームコンサルティング執行役員の赤石朗 プロセス&テクノロジービジネスユニット長
アビームコンサルティング執行役員の赤石朗 プロセス&テクノロジービジネスユニット長
(撮影:井上 裕康)
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 東京・目黒のウェスティンホテル東京で2016年11月24日に開催した「第2回イノベーターズサミット」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で、赤石氏はIoT導入に関するコンサルティング事例などを引き合いに出しつつ、企業の業種やビジネスモデルによってIoTの取り組みに差が出ていることを紹介した。

 赤石氏は2016年を「生産設備の見える化など、デジタル変革が進み始めた年」と位置付ける。「現在、独SAPや米マイクロソフト、米AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などが提供するクラウドのプラットフォームと、我々の分析ツールを連携して各種サービスを提供している。今後は、製品・設備の異常検知や故障予知といった本格的な活用を進めていく」(赤石氏)とした。

 しかし、企業の業種別に見るとIoTの取り組みに差がある。例えば、製造業では自動車や機械といった加工・組み立て生産の業種ではIoTの取り組みが盛んだが、それ以外の業種では取り組みがあまり進んでいない。

 「製造業の生産現場に近いマニュファクチュアラー(製品を製造する立場の企業)は、IoTの取り組みが盛んだ。一方、コンシューマー(消費者)と近い関係のリテイラー(小売業)は、IoTが普及するとかえって自身の強みを失ってしまうのではないか」と赤石氏は危惧する。このように、利益が相反するためのIoTの利用に抵抗意識を持つ企業が依然として存在する、とした。赤石氏は、こうした問題を解決して克服した事例の調査を続けることで答えを見つけたいという。