人工知能(AI)やクラウドサービス、IoT(Internet of Things)で新事業の創出を後押しする動きが本格化し、マイナンバーに加えてシステムの利用しやすさを高める法改正など、制度対応が急務に・・ 。2016年のIT業界を展望すると、攻めと守りの両面で大きな変化がありそうだ。

 AI領域では、優れた技術を持つベンチャー企業や研究機関と大手メーカーとの連携が深化する。トヨタ自動車は2015年12月、ディープラーニング技術のPreferred Networks(PFN)に10億円を出資した。クルマの自動運転の領域で、PFNの技術力を囲い込む。2016年1月に発足する米シリコンバレーの研究開発拠点との連携も模索する。

 連携先となる研究機関の整備も進む。文部科学省は2016年度、90億円の予算で国内最大級のAI 研究拠点「AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター」を、理化学研究所内に設置する計画。産業技術総合研究所が2015年5月に設置済みの人工知能研究センターと合わせ、基礎・応用の両面でAI人材の供給や産学連携が進む見通しだ。

AI活用促進の環境整備が進む

 2018年までにAI研究者を倍増させる計画を明らかにしたNECの江村克己執行役員は「AIの性能を左右するのは大量のデータ。データを円滑に流通、利活用できるルールの整備に期待している」と語る。個人情報保護法改正を受けて2016年1月に発足する独立機関「個人情報保護委員会」が、データ利活用のルール作りを主導できるか。同委員会の活動は要注目だ。

 クラウド領域では、オンプレミスの物理サーバーなどの移行によるコスト削減ではなく、顧客満足度向上や売り上げ増につながる新サービスの創造に活用する動きが増えるだろう。

 主役になるのはPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)だ。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)よりも開発作業に専念しやすく、ビジネスに貢献できるアプリ開発を高速化できる。