写真●「攻めのIT経営銘柄」の意義を強調する経済産業省の野口聡情報処理振興課長
写真●「攻めのIT経営銘柄」の意義を強調する経済産業省の野口聡情報処理振興課長
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 経済産業省と東京証券取引所は2015年5月、「攻めのIT経営銘柄」を公表する。情報システムやデータを駆使して、好業績を上げている企業を、業種業態別に1~2社選定・表彰するという試みだ。

 「日本企業が競争力を高めるためには、ITを活用して新サービスを開発したり、ビジネスモデルを変革したりするなど、『攻め』のIT投資に力を入れる必要がある」。2014年12月19日の説明会で経産省の野口聡情報処理振興課長は、こう強調した(写真)。

 「日本企業のIT投資は、欧米企業に比べて周回遅れの状況。コスト削減を目的とした『守り』のIT化だけでは、グローバル競争で戦うことは難しい」。「攻めのIT投資評価指標」策定委員会委員長である一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授は、こう指摘する。

“一丁目一番地”はIT活用力の強化

 経産省が攻めのIT経営銘柄を作ったのは、ITを使いこなす会社を増やし、日本企業全体の競争力を高めるのが目的だ。「日本企業の課題を様々な角度から議論・調査した結果、最優先で取り組むべき経営課題、つまり“一丁目一番地”はIT活用力の強化という結論に至った」(経産省の守谷学情報処理振興課長補佐)。

 ところが、日本の経営層の多くは、IT活用に対する意識が高いとはいえない。経営強化の武器としてITを使いこなすことが重要であることを日本企業の経営トップの多くが認識しなければ、「攻めのIT経営」を実現する会社は増えない。

 パンフレットなどによる啓蒙活動や補助金・助成金交付などの施策だけでは、IT利活用に無関心な経営層に興味を持たせることは難しい。「株価を左右する可能性のある指標を作れば、社長の関心度は高まる」(守谷課長補佐)。