「Amazon Web Services(AWS)」と「Microsoft Azure」に続く「第3」のパブリッククラウドが、相次いで機能を拡充したり、新サービスの提供を始めたりしている。米Googleは国内初めてのリージョン(データセンターの設置地域)を東京に開設。米IBMや米Oracleは、オンプレミスで提供する製品をクラウドでも利用できることを訴求する一方で、クラウド独自の機能も拡充している。

 Google、IBM、Oracleの3社とも、各社の持つ強みを生かした特徴を出そうとしている。ITエンジニアはこうした動きを押さえ、今後のクラウドの選択に役立てたい。

 東京でのリージョン設立を機に、日本の企業向けシステム市場での導入を伸ばそうとしているのが、Googleのクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」だ。2016年11月に開設した「東京GCPリージョン」内には、三つのゾーン(地域内の独立したデータセンター)を用意。仮想マシン「Compute Engine」など、利用時にリージョンを指定する主要なサービスについては、東京GCPリージョンを選べるようにした(図1)。「大企業のインフラとしての採用を目指したい」とグーグルの塩入賢治氏(Google Cloud Platform日本事業統括)は話す。

図1●Googleのクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」
図1●Googleのクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」
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 これまで、GCPの日本に最も近いリージョンは台湾だったこともあり、レイテンシー(遅延)が大きくなりやすかった。このため、レスポンスを求める業務アプリケーションを動かすシステムへの採用を見送る企業もあった。「東京GCPリージョンであれば台湾と比較して、レイテンシーが平均50~85%改善する」(塩入氏)。

 GCPが特に注力しているのが、機械学習関連のサービスだ。機械学習機能「Machine Learning」に加え、画像解析、翻訳などの目的に特化した学習済みサービスも提供し、「他社にはないノウハウを提供できる」(米Googleのタリック・シャウカット Google Cloudプレジデント)としている。

IBMとOracleはIaaSを強化

 消費者向けサービスで培った技術を企業向けに提供するGCPに対して、オンプレミス向けシステムで培ったノウハウを基にクラウドサービスを拡充するのが米IBMと米Oracleだ。

 米IBMは2016年10月に、これまで異なるブランドで販売していたIaaS「SoftLayer」を、PaaS「Bluemix」に一本化した。SoftLayerは買収したサービスだったこともあり「両者でIDも異なっていた」と日本IBMの木村桂氏(クラウド事業本部 クラウド・テクニカル・ソフトウェア Bluemix エバンジェリスト)は話す。

 今後は一つのIDで同じコンソールからIaaS、PaaSを利用できるようになる。「ITエンジニアは開発環境として細かくログが取得できるIaaSを利用し、完成したアプリケーションをPaaS上に移行して本番運用を行うといった開発がしやすくなる」と木村氏は説明する(図2)。

図2●IBMのクラウドサービス「Bluemix」
図2●IBMのクラウドサービス「Bluemix」
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 さらに日本IBMは、11月にPaaSと同等の機能をオンプレミスで導入できるアプライアンス機「Bluemix Local System」を発売。これにより「システム構築時に、オンプレミス、パブリッククラウド、そしてハイブリッドクラウドなどさまざまな環境を選べるようになった」(木村氏)。