日立製作所がOSS(オープンソースソフトウエア)への取り組み強化を急いでいる。カンパニー各社に散在していた知見・ノウハウを集約し、OSSを使ったシステム構築ニーズの高まりに応じることが目的だ。同社が重点領域に掲げる社会イノベーション事業の増強につなげたい考えもある。

 「日立グループ全体でみた場合、OSSへの知見を生かし切れていなかった」と、2015年10月1日付で情報・通信システム社内に設置したOSSソリューションセンタ室長を兼ねる日立 情報・通信システム社 システム&サービス部門COO(最高執行責任者)の山本二雄執行役員はいう。日立では、ITソリューションを手掛ける社内カンパニーである情報・通信システム社以外に、同じく社内カンパニーであるインフラシステム社などでもOSSを積極的に活用している。ところが今まで、各カンパニーが個別に、「R&D(研究・開発)部門」とやり取りしながら顧客対応してきたのが実態だ。

 社内で知見や人材が散在していては、顧客の要望に十分に応えるのは難しい。「OSSの活用は決して簡単ではない。無数にあるOSSごとの機能はもちろん、ライセンス規約や海外輸出する際に必要な管理手法への正しい理解が必要だ」と、安井隆宏OSSソリューションセンタ部長は指摘する。

2018年までにOSS人材を3000人に拡充

 非効率な体制を改めるため、三つの施策を推進する。一つは、OSSソリューションセンタの発足だ。まずは情報・通信システム社のOSS人材を集約。OSS分野における全社のハブ組織として、2016年3月をメドに全社的なノウハウの一元化を目指す()。「単にノウハウを集めるだけでなく、組み込みや制御分野との連携も活性化させる」(安井部長)。

図●日立製作所は2015年10月1日にOSSソリューションセンタを設置
図●日立製作所は2015年10月1日にOSSソリューションセンタを設置
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 さらに、OSSに関する機能やライセンス規約、サポート終了時期といった情報管理のデータベース(DB)を充実させる。新しく登場したOSSについては、ライセンス規約などのチェックだけでも下手をすると1カ月かかるが、あらかじめDB登録しているものならば1日で完了できるという。「システムインテグレーション(SI)案件で使う約8割はカバーできるようにしておきたい」と、山本執行役員は話す。

 OSSに詳しい人材の育成も加速させる。日立は現在約500人のOSS人材を、2018年までに約3000人に拡充する目算を立てる。OpenStackといったOSSごとに、2016年度にも全社横断の社内コミュニティを設置。グループ各社の技術者を参加させて社内交流を盛んにさせると同時に、各社で生じた課題を持ち寄り、解決策などを話し合う。外部のOSSコミュニティへのフィードバックもしていくという。