医療分野で、ディープラーニング(深層学習)をはじめとする人工知能(AI)の活用が加速している()。AIの知見を持つベンチャー企業が、大量の臨床データを蓄積する医療機関などと手を組み、診療などに役立つAIを開発。成長市場である医療の領域に切り込む。

図●医療用途での企業や団体などの取り組み
図●医療用途での企業や団体などの取り組み
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 国立がん研究センター、ベンチャー企業のPreferred Networks、産業技術総合研究所は2016年11月29日、がん治療にAIを使うシステムを開発する計画を公表した。同じくベンチャー企業のエルピクセル、FRONTEOも医療機関などと組み、2017年にAIの実用化を目指す。医療にAIを持ち込むことで、診断に要する時間を短縮できるほか、医者や研究者では発見が難しかった新たな知見を得られる可能性がある。

複数形式データを深層学習で分析

 国立がん研究センターらが始めたプロジェクトは、総額3億8000万円の予算を投じ、がんの診断や治療などにAIを使うシステムを開発するもの。5年以内に実用化する計画だ。

 国立がん研究センターが蓄積したゲノム情報や画像データなどの臨床情報に、深層学習を適用する。同センター研究所の浜本隆二 がん分子修飾制御学分野長は「複数のデータ形式をまたがる分析は、従来の手法では難しかった」と話す。深層学習を使えば、解析に必要な変数(特徴量)をコンピュータが自動で設定できる。従来の解析技術では、関数や変数の設定は技術者に頼っており、手間がかかっていた。

 深層学習用の計算機システムも用意する。同センター内に、米エヌビディア製GPUカード「NVIDIA TITAN X」を搭載するPCクラスターを用意する。