「紙の聖域」といわれる裁判所がデジタル変革に向けて動き出した。内閣官房はこのほど有識者会議を発足。訴状提出や書面管理、法廷での弁論など民事訴訟手続きの電子化を2017年度末までに検討する。

 「積極的に電子化に取り組んでいきたいと話をした途端に皆さんの目が点になっていた」。こう話すのは裁判所の立場で有識者会議に参加している成田晋司・最高裁判所事務総局民事局第一課長兼第三課長だ。電子化に消極的とみられていた裁判所の側から「積極的に取り組む」との発言が出たことが、他の参加者には意外だったのだろう。

 有識者会議の資料はインターネットで公開されている。ところが有識者会議の第1回会合に最高裁判所が提出した資料がネットで公開されると、一部の法曹関係者らの間に落胆の声が広がった。「IT活用は重要課題」と位置づけるものの、具体的な内容には乏しかったためだ。

 それでも成田課長は「現役の裁判官がネットで批評しているよりも前向きだ」と反論する。有識者の意見を聞きながら情報発信をして具体策を検討したいという。

ビジネスのしやすさ、26位に低下

 政府や裁判所がIT化に前向きな背景には、海外に比べて司法IT化の遅れが日本の国際的な評価の低下を招いている現状がある。ビジネスのしやすさを順位付けした世界銀行の2017年版ランキングで、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち26位だった。

 特に評価が低いのは「契約執行」などの司法手続き。「電子的手段による法的申し立てや訴状の送達、裁判費用の支払い、判決の公開」「裁判官や弁護士向けの電子的な案件管理ツールの有無」はいずれも最低の評価だった。