空いた施設やモノ、人材を貸し借りする「シェアリングエコノミー」が広がっている。2015年12月14日、ガイアックスやスペースマーケットといったベンチャー企業が集まって業界団体を設立(写真1)。ラクスルはトラック運送業者の空き時間を使った荷物配達サービスを始めた。米大手のエアビーアンドビーも事業拡大を模索する。政府が規制緩和に向けた議論を始めており、追い風となる可能性がある。人手や宿泊施設の不足をはじめとする社会的な課題を解決する試金石となりそうだ。

写真1●「シェアリングエコノミー協会」設立には同分野のベンチャー6社が集った
写真1●「シェアリングエコノミー協会」設立には同分野のベンチャー6社が集った
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 「シェアリングエコノミーの事業者が集まることで、健全なビジネス環境を作り、利用者の保護を図っていきたい」。12月14日、「シェアリングエコノミー協会」の代表理事に就任する上田祐司ガイアックス社長は、同協会設立の狙いをこう述べた(写真2)。ガイアックスは自家用車を複数人で乗り合い利用する「ライドシェア」のサービス「notteco(ノッテコ)」を運営する。

 シェアリングエコノミー協会の設立に参画するのはガイアックスを含めて6社。空き施設の貸し借りを仲介するスペースマーケット、顔見知り同士による育児や子供の送り迎えのサービスを運営するAsMama(アズママ)、仕事の受発注を仲介するクラウドワークスなどだ。発足は2016年1月4日の予定で、100社以上の参加を目指す。

写真2●「眠っている資産が流通し始めれば日本経済が変わる」と話すガイアックス上田社長
写真2●「眠っている資産が流通し始めれば日本経済が変わる」と話すガイアックス上田社長
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 協会の活動は事業者間の交流促進や勉強会の開催、既存事業者や利用者に対する普及・啓蒙活動だ。「将来的には事業者が順守するべき、利用者保護やサービス品質に関するガイドラインの策定も視野に入れる」(スペースマーケットの重松大輔社長)。

 「シェアリングエコノミーに関して、日本で最も情報が集まる団体にしたい」。クラウドワークスの吉田浩一郎社長は、こう意気込みを語る。シェアリングエコノミー分野では、楽天などが加盟する新経済連盟も推進をうたっている。新たに発足するシェアリングエコノミー協会は「分野を特化することで、事例の情報を集めやすくする。半年から1年をメドに、事例集を公開したい」(吉田社長)。

トラック業者の空き時間を有効利用

 協議会の設立発表に先立つ12月3日に新サービスを始めたのがラクスルだ。同社はシェアリングエコノミーの中でも、企業間(BtoB)サービスの先駆け的な存在。中小印刷会社の空き時間を使った低価格な印刷サービスを手掛ける。

 新たに始めたのはトラック運送業者の空き時間を使った荷物配達サービスの「ハコベル-hacobell-」だ。利用者がPCやスマートフォンを使って荷物の種類や配送区間などの条件を入力。運送業者は保有するトラックの空き時間を利用して、配送を受託する。利用者はEコマースで買い物をするような簡単な操作で、必要に応じて配送を依頼できる。運送業者は保有するトラックの稼働率を高められる。