ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」閉鎖に端を発した騒動は、ネット業界全体がはらむ問題点を浮き彫りにした(関連記事)。一つは「場」の提供に徹して自身は責任を負わないとするネット企業に流行する運営姿勢。もう一つはコンテンツ制作を安易に外部へ依存するリスクだ。

 影響はネット企業だけにとどまらず、一般企業にも波及しかねない。焦点はブログ記事などを使った「コンテンツマーケティング」。コンテンツ作成を外部に委託する企業が多く、書き手の経験や知識を確かめるのが難しいケースがあるからだ。コンテンツの責任は自社にあることを、企業は再認識すべきだろう。

守安社長ら出席者は、数回にわたって深々と頭を下げた
守安社長ら出席者は、数回にわたって深々と頭を下げた
(写真:陶山勉、以下同)
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 「当社のサービスを使っている皆様、取引先、株式投資家、全ての関係者に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます」。2016年12月7日、一連の不祥事についての会見で、守安功社長兼CEO(最高経営責任者)はこう謝罪した。

 会見ではこれまでの経緯に加えて、同社が運営する情報サイトの記事作成体制を説明した。対象はネット上の情報をあるテーマに沿って集めて編集する、「キュレーション」と呼ばれる種類の情報サイトである。

 DeNAがキュレーションサイト運営事業を始めたのは2014年。住まい関連情報の「iemo(イエモ)」、女性向けファッション情報の「MERY(メリー)」の運営企業を買収して参入した。以後、事業を急拡大し、10のキュレーションサイトを運営していた。

 11月29日、そのうちの一つであるWELQについて、内容の信頼性に関する批判の高まりを理由に全ての記事の公開を停止。残る9サイトについても、12月7日時点で全記事を非公開にした。

 DeNAは今後、外部の有識者などから成る第三者委員会を設置して、「企業風土やコンプライアンス、組織体制なども含めて抜本的な原因を究明する」(守安社長)。キュレーションサイト事業の先行きについては明言を避けたが、「ユーザーに喜ばれて世間の納得も得られ、ビジネスとして成立させられるかが重要。利益を生む可能性が低いと判断すれば撤退もあり得る」(同)。

内容に責任負わず、「プラットフォーム」という姿勢

 一連の騒動は、現在のネットで広がる事業運営に関する二つの問題を浮き彫りにした。一つはネット上の「場」を提供するにすぎないとする立場だ。

守安社長は自身の認識の甘さを繰り返し述べた
守安社長は自身の認識の甘さを繰り返し述べた
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 会見でDeNAの守安社長らは、自社のキュレーションサイトを「プラットフォーム」と説明した。ここで言うプラットフォームとは、情報の掲載やネット上での交流、利用者同士のマッチングといったサービスの「場」という意味だ。DeNAが運営していたキュレーションサイトをはじめ、消費者同士がモノや空き時間などをやり取りするシェアリングエコノミーと呼ぶサービスの運営企業も、多くは自社をプラットフォームと称する。

 彼らの多くに共通するのは、流通するコンテンツの内容や当事者間の契約には責任を負わないとする立場。DeNAのキュレーションサイトでも、掲載する記事(コンテンツ)の内容には責任を負わない旨の但し書きを記載していた。

 同社がコンテンツを作成する際、外部ライターを組織する手法として使っていたクラウドソーシングも、多くはプラットフォームとの立場を取る。例えば同業大手のクラウドワークスやランサーズは、コンテンツ作成などの業務の発注元と業務を受ける書き手が直接、業務委託契約を結ぶ。各社は発注する業務の内容などは自社の利用規約で規定しているものの、原則として業務の内容や成果物の品質に責任は負わないとする。