「オムニセブン」をセブン&アイの「第三の革新」と語っていた鈴木康弘氏
「オムニセブン」をセブン&アイの「第三の革新」と語っていた鈴木康弘氏
(写真:陶山 勉)
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 セブン鈴木康弘氏が取締役を年内に退任――。この事実が2016年12月9日に明らかになるおよそ2週間前のことだ。

 「カリスマ的な経営トップがいなくなり、経営体制が変わるなど非常に難しい1年だったなと思います。ただしオムニチャネル戦略は、小売業が進む道として間違いのないものであり、これを継続することに変わりはありません。今までと違うのは、その進め方です。今後は現場主導でいろいろ議論しながらやっていこうと。それも一つのやり方かなと考えています」。

 2016年11月24日に日経ITイノベーターズが開催したCIO(最高情報責任者)などが集まる会合の場で、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木康弘取締役はこう発言した。おそらくこの場が、康弘氏がセブン&アイ取締役として公の場に立つ最後の機会になることだろう。

 康弘氏の実父である鈴木敏文前会長(現在、名誉顧問)が2016年5月にセブン&アイを退任するまで、康弘氏が同社のオムニチャネル戦略のトップだった。2015年11月に開設したグループ横断ECサイト「omni7(オムニセブン)」を実現するために、グループの事業会社7社とIT企業10社以上を率いたのが康弘氏である。

 同氏は「チームIT」というプロジェクト手法を採用し、グループ横断で先進的なITシステムの構築をけん引した。「なんだかんだデジタルやITということに詳しい経営層といえば、康弘さんぐらい。IT企業とのパイプもあるし、父親の存在がどうとかに関係なく、オムニ戦略にとって欠かせない人物だっただけに寂しくなる」とセブン&アイ関係者はこう打ち明ける。