2017年7月から国の行政機関や地方公共団体などはマイナンバー(個人番号)で、それぞれの個人データの情報連携を始める。情報連携によって、政府は行政事務を効率化して、国民向けの行政サービスに人材や財源を振り向けられると説明する。ところが、自治体関係者からは効率化できるのか疑問の声が上がっている。情報連携できる事務処理が限られ、紙でのやりとりが残るためだ()。

図●マイナンバー制度による自治体業務
図●マイナンバー制度による自治体業務
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 官僚OBや社会保険労務士、税理士らが行政の電子化について研究しているNPO法人「東アジア国際ビジネス支援センター(EABuS)」は2016年11月18日、「情報連携が必要な事務について、極力マイナンバーで完結すること」を求める提言を公表した。

 自治体が行う事務のうち、生活保護費の支給手続きに必要となる法定47項目の調査事項のうち、マイナンバーで情報連携できるのは17項目にとどまる。親子や夫婦関係を証明する戸籍や、保有資産に関係する情報は、従来どおり紙による調査が必要という。

 マイナンバー制度は、どの行政機関がマイナンバーを利用して個人情報を照会できるかを法律で限定、列挙している。マイナンバーを使う事務に戸籍を含めるには、法改正やプライバシー保護の仕組みが必要で、法務省は行政関係者らによる検討会を立ち上げて議論している。EABuSのメンバーで総務省OBの中井川禎彦氏は「情報連携で戸籍のデータの精度を高められるメリットが法務省にもある」と主張する。