金融サービス大手のオリックスは2014年内をめどに、小規模事業者向け会計ソフト大手の弥生を買収する。弥生の親会社であるアジア系の投資ファンドMBKパートナーズから、弥生の株式99.9%を取得する計画だ。買収金額は、既存の借り入れ返済分を含めた総額800億円超になる見通し。買収完了後も、弥生はオリックスの子会社として事業を継続する。

 実はオリックスは弥生に対し、3年越しで“ラブコール”を送っていた。2011年に弥生の買収を検討したものの、MBKパートナーズと条件が折り合わず実現できなかった。風向きが変わったのは2014年夏。MBKパートナーズから「弥生を売却したい」との打診があり、交渉を進めた結果、今回の買収に至った。

 オリックスがそこまで弥生の買収に執着したのはなぜか。買収された弥生側にはどのようなメリットがあるのか。オリックスと弥生のキーパーソンへの取材を通じて、真の狙いを探る。両社の合併劇は「ユーザー企業の成長戦略」であると同時に、「ベンダーの生き残り策」でもある点で、他社にも大いに参考になる事例と言えそうだ(図1)。

図1●オリックスによる弥生買収の概要と両社のメリット
図1●オリックスによる弥生買収の概要と両社のメリット
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125万社の顧客基盤に向け、自社サービスを拡大

写真1●オリックスの松崎悟執行役
写真1●オリックスの松崎悟執行役
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 「弥生は安定的に収益を上げており、今後も成長していく可能性が高い」。弥生買収の交渉窓口となったオリックスの松崎悟執行役は、弥生についてこう評する(写真1)。

 弥生は会計ソフト「弥生会計」や確定申告ソフト「やよいの青色申告」など、小規模事業者や個人事業者向けの業務ソフトの開発、販売、サポートを手掛けている。主力製品の弥生会計は、小規模事業者向け会計ソフトで7割を超すシェアを持つ。