フロントエンドからサーバー側まで、全てを1人で開発できる「フルスタックエンジニア」を3カ月103万円で養成する講座「コードクリサリス」が注目を集めている。講座を提供するのはコードクリサリスジャパンだ。即戦力となるITエンジニアを育成することから、日本の大手ITベンダーや電気メーカー、自動車メーカーなどが2018年から、企業の研修としてコードクリサリスを受講させる検討を始めている。

 コードクリサリスが、ITエンジニアを育成の目的とした他の研修と異なるのは、受講者が企業を辞めたり、休職したりして参加することを前提にカリキュラムが組まれていることだ。受講者は平日の午前9時から午後6時まで、東京・六本木にあるコードクリサリスの教室に通う必要がある。授業に加えて、1週間で15時間分程度の宿題が出る。3回の遅刻で1日分の欠席とみなされ、3日の欠席で除籍になるという厳しさだ。

 こうした短期間に高い負荷をかけてITエンジニアを育成する講座は、軍隊の新人教育になぞらえてブートキャンプと呼ばれている。受講者の負荷が高い分、即戦力となるITエンジニアを育成するため、米国のシリコンバレーなどで注目を集めているという。

 コードクリサリスも「卒業した際には、シリコンバレーの有名企業に就職できるような技術力や考え方を身に付けることを目指している」と米コードクリサリスの共同創立者でCEO(最高経営責任者)のカニ・ムニダサ氏は強調する。米コードクリサリスは米国で起業し、コードクリサリスジャパンを設立。現在は日本でのみ2017年7月から講座を提供している。9月末に卒業した1期生の中には、前職と比較して給料が約70%増で転職したITエンジニアもいるという。このITエンジニアはカナダ人で、コードクリサリスに入学する前はは日本の大手EC(電子商取引)企業に勤務していた。

Web開発をプロジェクトベースで習得

 コードクリサリスのカリキュラムの特徴は、システム開発のプロジェクトベースで全ての講義を実施することだ。「当面はJavaScriptを使ったWeb系のエンジニアの育成を目指している」と共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるヤン・ファン氏は説明する。

コードクリサリスの授業風景
コードクリサリスの授業風景
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 フロントエンドであればJavaScriptフレームワークの「React」や「Redux」を使った開発、サーバー側ではデータベースの「PostgreSQL」や「Redis」などを使って実際にシステム開発をしながら、Web系のフロントエンドとサーバー側の技術を習得していく。このほか現在は、分散メッセージング処理を支援する「Apache Kafka」や、クエリー言語の「GraphQL」などを講座に取り入れている。「Web系の技術は非常に移り変わりが早いので、流行を見ながら講座に取り入れる技術を決めている」とヤン氏は話す。

 開発手法として、アジャイル開発やテスト駆動開発などを中心に学ぶほか「GitHub」などのツールの使い方も習得する。「JavaScriptエンジニアを育成するわけではなく、ソフトウエア開発全般を担えるITエンジニアを育成する」(ヤン氏)として、「1週間でJavaScript以外の言語を習得して、Webアプリケーションを1つ開発。その概要を他の受講生にプレゼンテーションする」といった課題も用意している。受講生は「Go」や「Kotlin」といった言語を選択し、開発可能な言語の幅を広げていくという。「卒業時にはJavaScriptの知識をコアに、どのような言語にも対応できるITエンジニアになる」とヤン氏は話す。