「ユーザーからは『お得感がない』、『もっと魅力的なプログラムにできないのか』といった声をもらっており、まだプログラム内容が不十分と認識している」――。KDDI(au)が8月29日から開始した顧客体験価値の向上を目指したauユーザー向け会員制プログラム「au STAR」について、同プログラムを担当するKDDIコンシューママーケティング本部コンシューママーケティング2部サービス推進Gの水野香グループリーダーはこのように打ち明ける。

 au STARは、店頭で顧客を待たせないように、来店日時を予約できるような仕組みを取り入れた「au STARパスポート」のほか、長期利用者の優遇策として4年以上利用しているユーザーに対して、データ定額料に応じて毎月ポイントを還元する「au STARロイヤル」などで構成する。申し込みは無料であるため、8月末の開始以降、11月20日に会員数は500万加入を突破した。「au WALLETと比べても同等、もしくは速いペースで推移している」(水野グループリーダー)というため、加入数については順調と言ってよい。

写真1●au STARの加入数は500万を突破するなど順調。しかしプログラム内容はまだ不十分と悩みも見せる。
写真1●au STARの加入数は500万を突破するなど順調。しかしプログラム内容はまだ不十分と悩みも見せる。
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 ただau STARは「KDDIがここまでしてくれるとは思わなかったという感動価値を作ることが目標」(水野グループリーダー)とし、それによって長期にauを利用するユーザーを増やすことを目指しているだけに、冒頭のようなユーザーの声があることは大きな課題となる。

 さらには「au STARはポイントがたまりにくい印象がある」というユーザーの声も多いという。au STARは、長期ユーザーの優遇策でもあるため、他の共通ポイントプログラムと異なり、誰もがお得感があるような形でポイント付与を強化できない点も悩ましいところだ。無闇にポイント交換先を増やしても、ロイヤルティー強化の目的とはズレてくる。

 同社は、テコ入れ策として11月29日から、au STARの会員向けに厳選した約80点の商品を通常の還元率である1ポイント=1円以上の価値で提供する「au STARギフトセレクション」を開始する。「例えば1万ポイントで1万5000円相当の商品と交換できるなど、かなりお得な内容になっている」と水野グループリーダーは強調する。

 もっとも1ユーザーとしてau STARギフトセレクションの内容を見た時、いくら「1万ポイントで1万5000円相当の商品と交換できる」と言われても、まるでお得と感じなかった。交換したいと思う商品が見当たらなかったのに加えて、ポイントに換算されてしまうと、それが本当に得なのかどうか、直感的に把握しづらい。

 さらには提供者目線でお得感をゴリ推しされているようで、“自分向けにお得”という感じがしない。au STARの課題は、「お得感が足りない」のではなく、ロイヤルティーマーケティングの基本である“自分ごと化”が不十分な点ではないか。

 au STARをあらゆる顧客接点を再構築し、顧客体験価値向上を目指す取り組みとして捉えると、ポイントプログラムの充実よりも優先すべき施策は多いと感じる。まずは顧客自身をもっと知り、御用聞きのようにユーザーが困っていることを先回りして、解決するような取り組みこそ手厚く取り組んでほしい。顧客接点をより強固にするためには、アプリケーションを通じてプッシュでお知らせするような仕組みも必須だろう。さらなる取り組みの強化に期待したい。