家庭内に続々と、IoT(インターネット・オブ・シングズ)対応機器が入り込み始めている。話題のスマートスピーカーのような新しい製品だけでなく、テレビやビデオ(レコーダー)、冷蔵庫、洗濯機といった一般的な家電製品もこの先、IoT対応が当たり前になっていくだろう。それがスマートハウス(IoT住宅)の基盤になる。

 そんななか、大阪ガスは2017年10月に新しいIoT対応機器を発売した。同社で年間販売台数が最も多い省エネ給湯器「エコジョーズ」に、無線LAN接続を可能にするIoT機能を搭載したのだ。

 給湯器は、屋外に置く本体と家の中の壁に埋め込むリモコンで構成される。リモコンのほうに無線LAN接続機能を内蔵し、家庭内で利用している無線LANルーターを経由してネット接続できるようにした。まずは年間で約1万5000台の販売を目指す。

 IoTの仕組み自体はシンプルだ。ただこれまでは家庭用ガス機器ではコストが見合わず、実現できなかった。しかしここにきてクラウドを利用したサーバーコストの低減で採算にメドが立ったうえ、家庭内の無線LAN環境が普及し、スマートフォンの利用も一般化したことを受けて、発売に踏み切った。

 利用者がリモコンの無線LANルーター接続に「同意」すれば、開始できる。

給湯器がIoT対応すると何がうれしいか

 本題はここからだ。ガス給湯器がIoT対応になると、利用者にはどんなメリットがあるのか。スマートハウスを構成する全ての機器に共通していえることだが、IoTのメリットをアピールできないと機器は普及しない。家庭内にある様々な機器のデータを収集できるという企業側のメリットしか見えなければ、利用者は積極的には導入しないだろう。

 今回、大阪ガスはIoT給湯器を発売するに当たり、6つの機能(サービス)を用意した。エコジョーズには複数の機種があるので、6つ全ての機能を全機種で使えるわけではないが、利用者は目的に応じて機種を選べる。

 6つのサービスに共通するのは、スマホアプリとの連携を前提にしていること。分かりやすいのは、外からスマホアプリでお風呂のお湯はりや床暖房の運転を開始できる「遠隔操作」や、ガスやお湯の使用量をスマホアプリで表示する「見える化」。ほかにも、お風呂のお湯はり時に栓を閉め忘れたなどのエラーが発生したときの「お知らせ」や、給湯器の故障を電話で知らせる「給湯器見守り」もある。

 以上の4つはどれも「あれば便利」なのは確かだ。特に給湯器の見守りは、大阪ガスが給湯器の運転状況をモニタリングし、異常があればメンテナンス担当者を素早く派遣してもらえるなら、ありがたい。給湯器が壊れるとお湯も沸かせないし、お風呂にも入れない。素早く解決できるに越したことはない。

 それでもまだ、訴求力に欠けるかもしれない。そもそも給湯器は滅多に買い替えることがないし、頻繁に故障するものでもない。「IoT対応の新製品に変えよう」という強い動機につながるのか疑問が残る。それは大阪ガスも分かっている。

 そこで、さらに2つのサービスを加えて、目新しさをアピールした。それが「入浴見守り」と「ヘルスケア管理」である。どちらも大阪ガスが目を付けたのは、お風呂だ。

入浴するだけで体脂肪率が分かる不思議

 高齢者の長時間入浴や若い女性に多い長風呂への注意喚起を促す入浴見守りは、まさにIoTならではの機能である。IoTの肝になるのは、各種センサーから収集するデータの解析だが、大阪ガスは今回、IoT給湯器の「浴室リモコン」に人感センサーと温度センサーを搭載した。給湯器本体には水位センサーが入っている。

IoT給湯器を使った「入浴見守り」の例。3つのセンサーでヒートショックや長時間入浴に注意喚起する
IoT給湯器を使った「入浴見守り」の例。3つのセンサーでヒートショックや長時間入浴に注意喚起する
(出所:大阪ガス)
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