IoT(Internet of Things)の世界的な推進団体の一つであるOpenFogコンソーシアムは2016年11月下旬にも「フォグコンピューティング」の定義や、参照アーキテクチャーを記した文書を公表する見込みだ。OpenFogコンソーシアムの日本地区委員会のディレクターを務める日立製作所ICT事業統括本部 執行役員 Senior Technology Evangeristの安田誠氏は、「日本からユースケースを提供するなどの貢献を目指している」と話す(写真1)。

写真1●OpenFogコンソーシアムの日本地区委員会のディレクターの安田誠氏
写真1●OpenFogコンソーシアムの日本地区委員会のディレクターの安田誠氏
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 OpenFogコンソーシアムは2015年11月に、米シスコシステムズ、英ARM、米デル、米インテル、米マイクロソフト、米プリンストン大学が設立した。フォグコンピューティングは、デバイスで発生した大量のデータをクラウドに送る前に、集約などの処理を実施することを実現するアーキテクチャーだ。クラウドより下に位置する場所で処理を実施することから「フォグ(霧)」という名称になった。OpenFogコンソーシアムは、フォグコンピューティングの普及・推進を目指している。

 IoTを実現するためのアーキテクチャには、フォグコンピューティングと同様にデータをデバイス側で処理するエッジコンピューティングがあるが、「エッジとフォグの考え方は似ているが、まったく同じではない」(安田氏)という。これまでフォグコンピューティングは明確な定義はなかったため、11月下旬に公表する文書で明確に定義する。

 11月末に提供を予定している文書は、OpenFogコンソーシアムの活動の具体的な成果物の第一弾となる。フォグコンピューティングの定義のほか、プロトコルやデータフォーマット、セキュリティといったフォグコンピューティングの実現に必要な技術的要素の整理、参照アーキテクチャーの提示といった内容を予定している。「全部で150ページ程度の文書になる見込みだ」(安田氏)。

 文書の位置づけについて安田氏は、「標準を作ってそれを広げることを狙っているわけではない」と説明する。IoTで発生したデータの処理は大きく分けて、OpenFogコンソーシアムが推進するデバイスに近い側での処理と、データをインターネット経由で送信するクラウドコンピューティング側での処理が想定されている。OpenFogコンソーシアムが目指すのは、「フォグとクラウドを切り分けたうえで、どのようなフォグやクラウドでも相互に接続できること」(安田氏)という。