NECがIoT(Internet of Things)事業で攻勢に出る。2020年度に3000億円の売り上げを目指し、製品ラインナップの拡充や体制強化を急ぐ。

 「将来、デバイスとクラウドを直接つなぐようなIoTシステムは限界を迎えるだろう」。2015年11月12日、NECのユーザーイベントで遠藤信博社長はこう力を込めた。遠藤社長はネットワーク遅延が問題になるとみる。

 IoTが進展すると、リアルタイム性が欠かせないサービスが続々と登場してくる。自動運転車が一例だ。センサーから収集したデータを解析し、実際に自動車を制御するまで何秒も掛かるようでは実用化には遠い。

 NECは11月9日にIoTの製品戦略説明会を開き、IoTの5層モデルを打ち出した()。今後のIoTシステムの課題になると予測するネットワークの遅延を解消するのが狙いだ。

図●NECが提唱する5層のIoTプラットフォーム
図●NECが提唱する5層のIoTプラットフォーム
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 重視するのはクラウドとデバイスをつなぐ「エッジコンピューティング」層。デバイスから収集したデータをフィルタリングしてクラウドに送信するのが主な機能だ。将来はデータ分析やデバイス制御の機能をクラウドと分担させる。ネットワーク上の遅延を減らし、リアルタイム性の高いIoTシステムの実現を図る。「IoTサービスが求めるリアルタイム性に応えられれば、大きなビジネスチャンスになる」と、NECの福田公彦執行役員は語る。

 2014年11月には、エッジ層に当たる製品「RG-G200L」の販売を開始した。クラウドと各デバイスを中継するアプライアンスだ。2016年度には、「よりインテリジェンスな製品を投入していく」(福田執行役員)。

 第一弾は、NECが強みを持つ画像処理技術を活用したアプライアンスになりそうだ。例えば、防犯カメラの映像の中から危険事象だけをクラウドに送信、分析し、防犯対策につなげるといった用途を想定する。映像データを全てクラウドにアップロードしていては迅速な対応が難しい。