「当店は完全キャッシュレスのため、お支払いはクレジットカードか電子マネーでお願いしています。それでもよろしいでしょうか」。入店すると店員がこう話しかけてくる飲食店が開業した。ロイヤルホールディングス(HD)が2017年11月6日に東京・日本橋馬喰町にオープンしたキャッシュレスでセルフオーダー型の実験店舗「GATHERING TABLE PANTRY」だ。

「GATHERING TABLE PANTRY」ではiPadでメニューを見て注文する
「GATHERING TABLE PANTRY」ではiPadでメニューを見て注文する
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40分のレジ締めが10秒に

 接客や店舗運営、従業員教育に加え、売り上げや現金の管理、食材の発注、本部からの問い合わせ対応など、店長には多大な負荷がかかっている。いかに負荷を軽減して、本来の業務に集中してもらうか。「生産労働人口が減少して人材確保が難しくなる未来を見据え、ロイヤルホストなどの既存店ではできないことを試す場としてR&D(研究開発)店舗を設置した」とロイヤルHDの野々村彰人常務は話す。

ロイヤルホールディングスの野々村彰人常務。「店長の負荷を軽減できる店をつくりたい」
ロイヤルホールディングスの野々村彰人常務。「店長の負荷を軽減できる店をつくりたい」
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 新店舗で目指したのは、特に負担となっている「レジ締め」を無くすこと。営業終了後に現金を数え、クレジットカードや電子マネーの支払金額の合計を確認し、POS(販売時点情報管理)システムが集計した1日の売り上げと照合する作業だ。ロイヤルHDの通常の店舗ではレジ締めに平均40分かかっているという。金額が合わなければ再集計などで数時間かかることもある。差が出た場合は本部への届け出も必要だ。現金回収や営業開始前の釣り銭の配備などの手間もかかる。現金の取り扱いをやめてキャッシュレスにすれば、こうした負担をほぼゼロにできる。

 実験店舗ではキャッシュレスの決済システムに「楽天ペイ」を採用。楽天ペイの合計決済金額を出力し、店舗のPOSシステムの売り上げと照合するだけでレジ締め作業が完了する。「10秒くらいで終わってしまう」(ロイヤルHD企画開発部の泉詩朗氏)。