NTTドコモはテレコムインサイドの取材に対し、加入者から下取りしたiPhoneを含む中古スマートフォンの一部が海外に流通している現状を説明した。以前は再利用しにくい他の携帯電話事業者の端末だけを売却していたが、「2015年秋の『iPhone 6s』発売から中古端末の下取りを強化したことにより下取りの台数が増加した」(営業本部マーケティング部ロイヤリティプログラム担当部長の大橋秀俊氏)。そこで最近はNTTドコモが自ら調達・販売した自社端末の中古品も一部は協力会社に売却し、主に海外に流通していると明らかにした。NTTドコモが海外流通の現状を踏み込んでメディアに説明するのは初めてだ。

写真1●ゲオなどが中古スマホの買い取り・販売を進めているが、国内における中古スマホの流通数は227万台(2014年度、MCN調べ)と言われている。スマホの出荷台数に対する中古スマホの販売実績はわずか8%にとどまっている。
写真1●ゲオなどが中古スマホの買い取り・販売を進めているが、国内における中古スマホの流通数は227万台(2014年度、MCN調べ)と言われている。スマホの出荷台数に対する中古スマホの販売実績はわずか8%にとどまっている。
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 新規や機種変更の加入者から下取りした端末の使途について、NTTドコモは2015年12月末時点の本誌取材に対し「ケータイ補償サービス向けにリフレッシュ品として再利用している。国内外に中古品としては流通させてはいない」と回答していた。一方で、NTTドコモは総務省が10月から開いている「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の事業者ヒアリングでは、「一部の中古端末は海外に流通している」と説明している。今回、NTTドコモの担当部門は2015年末時点と現在で、海外流通がどうなっているのかについて本誌に対して説明した。

 まず2015年末の時点の流通状況については、「NTTドコモが調達・販売した自社端末はすべてリフレッシュ品として再利用していた。ただしNTTドコモ向けに再利用できない他事業者の端末を下取りする場合もあり、これらの端末は少量ながら協力会社に売却していた」(大橋担当部長)という状況があったことを明らかにした。

 さらに2016年に入って状況が変わり、NTTドコモ向けの自社端末も協力会社に売却するようになったという。2015年秋のiPhone 6s発売を機にした下取りの強化だ。2016年春には「(実質0円端末などを禁止する)総務省のガイドラインが施行されたこともあり、現在は顧客にとって下取りこそが最大の還元になった。機種変更に伴い従来機種を売ろうと考える顧客が増え、下取り台数は漸増傾向にある」(大橋担当部長)。一方で、ケータイ補償サービスで再生品として使う中古端末の需要はほぼ一定なため、再利用しきれない端末が出てきた。最近はこれらの端末を「経済合理性に従って協力会社に売却している」という。

 協力会社による中古端末の流通先については「主に海外に売却していると聞いている」(大橋担当部長)。日本で人気が高いiPhoneも海外に売却されているという。その理由は、協力会社の説明によると「海外のほうがiPhoneが高く売れるから」とした。「NTTドコモとして国内で売却することを禁じてはいない。メーカーから指示も受けていない」(大橋担当部長)。

 現在、NTTドコモは販売代理店でのiPhoneの下取り価格を、1世代前のiPhone 6sの場合で2万7000円と決めている。この価格は、国内の中古流通業者の買い取り相場を調べて同水準に設定しており、相場以上の有利な価格での下取りはしていないと説明した。価格は同水準だが、ドコモショップで下取りに出せばワンストップで新機種に機種変更できる、というメリットを打ち出す狙いだという。

 NTTドコモが加入者に中古端末を販売する可能性については「否定はしていない。中古端末の販売で新規加入者をたくさん増やせるかどうかという、経済合理性で判断する」との立場を示した。