神戸製鋼所や日産自動車、SUBARU(スバル)といった大企業で、不祥事が相次いで発覚した。独自に体系化した「なぜなぜ分析」を通して、トラブルの再発防止策を導いてきたマネジメント・ダイナミクスの小倉仁志社長は今回の不祥事をどう見ているのか。課題と再発防止策を指摘してもらった。

神戸製鋼所が今回の不祥事について掲載したお詫びの画面
神戸製鋼所が今回の不祥事について掲載したお詫びの画面
(出所:神戸製鋼所)
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 今回の不祥事について小倉氏は、「どの企業にとっても他人事ではない。どこでも起こり得る課題が不祥事の背景にはある。一番の問題は、管理者の役割と責任範囲の不明確さだ」と指摘する。

 問題が発覚した各社に共通するのは、歴史あるメーカーの製造現場で「長きにわたって不正が行われていた」ということだ。1件だけ起こったような突発的な出来事ではない。そうなると経営責任を問われるのはもちろんだが、「単発の不正行為ではないということは、現場の作業者の判断で不正を続けていたとは考えられない。工場長以下、現場の管理者など上からの指示で、組織ぐるみで実施していたことになる」(小倉氏)。

組織ぐるみの確信犯には内部通報制度が通用しない

 こうなると、内部通報制度などがあったとしても機能しない。「内部通報制度は社員の強い正義感や勇気を前提にした不正防止策。それだけでは不祥事を防げないことが明白になってしまった」(小倉氏)。社員の正義感に期待するだけでは、残念ながら不正は防げないし、なかなか発覚しない。

 実際、神戸製鋼は2017年11月10日に公表した「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」のなかで、多くの不適切事案において「複数の部署にまたがる広範囲の関与者」がおり、しかも「長期間にわたり不適切行為が継続された」と明らかにしたほか、そのことが「社内で公に発覚しなかった」と記している。

神戸製鋼は検査データの改ざんが長期間続いていたことを認めた
神戸製鋼は検査データの改ざんが長期間続いていたことを認めた
(出所:神戸製鋼所)
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 組織ぐるみの確信犯となると、再発防止策はヒューマンエラー(人為的なミス)への対策とは根本的に違うものにならざるを得ない。通常、データ入力に絡むヒューマンエラーのなぜなぜ分析では「~に気づかなかった」という「なぜ?」を考えるのが、小倉氏が編み出した手法のなかでも特に有効だ。

 例えば、担当者が間違ったデータを入力したとしても、処理される前に当事者または管理者が入力間違いに気づける仕組みがあれば、ミスを水際で防げる。それが再発防止策になる。

 だが神戸製鋼のように意図的にデータを改ざんしていた場合、話は全く違ってくる。小倉氏は「入力したデータを誰も修正や変更できない仕組みを導入するか、数字の入力なら特定の桁数や範囲以上(あるいは以下)は入力できない画面フォーマットにしてしまうのも手だ」と語る。

 本来、こうした対策は、経理システムを悪用した不正会計による社員の横領などの犯罪を防ぐ場面で用いられる手段である。それほど今回のデータ改ざんは深刻な問題ということだ。