日本の製造現場が揺らいでいる。神戸製鋼所や日産自動車、SUBARU(スバル)といった日本を代表する大企業で、不祥事が相次いで発覚した。
こうした現実を、独自に体系化した「なぜなぜ分析」を通してトラブルの再発防止策をいくつも導いてきたマネジメント・ダイナミクスの小倉仁志社長はどう見ているのか。製造現場を長年指導してきた立場から、課題を指摘してもらった。
なお、最初に断っておくが、小倉氏の指摘は今回不祥事が発覚した個々の企業に対するものではない。小倉氏自身が自分の目で見てきた、昨今の製造現場全般にいえる問題に対する見解である。その多くは、実は製造業のみならず、ほかの業界にも同じように当てはまるものが多い。
つまり、業種・業態や企業規模にかかわらず、今回の不祥事はどの企業にとっても他人事ではない。どこでも起こり得る課題が不祥事の背景にはあるということだ。その点を念頭に置きながら、読み進めてほしい。
管理者が自分の役割と責任を分かっていない
小倉氏が真っ先に挙げたのは「現場の中間管理職(以下、管理者)」にまつわる問題だ。「管理者が自分の役割と責任範囲を認識していない、もしくは役割と責任が明確になっていない現場が非常に多い。こうした現実が、多くの不祥事の根底に隠れている」。
それを象徴するようなシーンを、なぜなぜ分析を実施しているときに垣間見られるようになってきていると小倉氏は明かす。
管理者が、現場で起きる様々なトラブルの陰に潜む「自分自身の問題」を棚上げしたまま、ミスの原因追究の場で「部下を“個人攻撃”しているとしか思えない発言を繰り返すケースが散見されるようになった」というのだ。ミスをした当事者に対して、「なぜそんなことに気づかなかったんだ!」といった具合に詰め寄る場面に出くわすことがあるという。
こうした管理者からの執拗な詰問に耐え切れず、「私のところに『管理者から、君の性格を見直せとまで言われた』と泣きついてきた人までいる」と小倉氏は嘆く。