東日本大震災で被災した市区町村で、死者・行方不明者数が約3600人と最も被害規模が大きかったのが宮城県石巻市だ。同市は2014年6月から建設分野向けの情報共有クラウドサービス「CIM-LINK」を導入し、復興事業の効率化に活用している。
復興事業の一つは雄勝半島に点在する46地区に対し、67の小規模の防災集団移転団地を整備するもの。事業を進める際に課題だったのが、半島部での復興状況の情報共有だった。
石巻市役所 建設技術管理監の大元守氏は「全体の進捗状況を管理する仕組みがないと事業をスムーズに進めるのは難しい」と、2015年10月末開催の建設関連イベント「CIM JAPAN2015」で語った(写真)。
同氏が課題解決のために目を付けたのは、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)に対応したクラウドサービスである。同氏によると、CIM対応のクラウドを探したところ、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が提供するCIM-LINKしか見当たらなかったという。
移転団地への不満を減らす
CIMは、実際の地形などから3次元(3D)モデルを作り、施工や維持管理での関連情報を加え、建設事業全体の生産性向上を図る手法のこと。建物の3Dモデルを活用する建設手法である「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の応用版だ。
石巻市はCIM-LINKを使って47地区を地図上に表示し、3Dモデルなどの関連ファイルを一元共有できるようにした(図)。住民に対する説明会でも3Dモデルを使う。「高低差なども分かるので、平面図より施工イメージが伝わりやすい。後から不満が出ることが減った」(大元氏)という。