中国向け越境ECの年末商戦を前に、日本企業が戦略転換を模索している。EC運営最大手、アリババ・グループ(阿里巴巴)が運営するECモール「Tモール(天猫)」は出展企業同士の競争が激化。ドラッグストア「キリン堂」や化粧品通販のアイスタイルといったTモールに出店する日本企業は、明日に迫った年に一度の特売日に向け、デジタルマーケティングで差異化を図る。

 一方、中国越境ECの急成長株「vip.com(唯品会)」が密かに日本でも始動。「強すぎるTモール」に次ぐ選択肢となりそうだ。

キリン堂ホールディングスの小林剛久執行役員経営企画部長(右)とキリン堂の伊藤雄喜新事業開発部・通販ネットビジネス部長
キリン堂ホールディングスの小林剛久執行役員経営企画部長(右)とキリン堂の伊藤雄喜新事業開発部・通販ネットビジネス部長
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年に一度の大勝負迫る

 「今年で3回目の挑戦。越境ECの年間売上高の半分を1日で稼ぎ出す、最大の商戦だ」。こう語るのは、ドラッグストア「キリン堂」などを運営する、キリン堂ホールディングス(HD)の小林剛久執行役員経営企画部長だ。

 同社が最大商戦と位置付けるのは明日、11月11日だ。アリババは毎年この日、年に一番力を入れる24時間セールを仕掛ける。1が並ぶことから同社は11月11日をシングルズ・デー、すなわち「独身の日」と呼ぶ。

 独身の日だけで2014年は1兆円、2015年は1兆8000億円の売上高を記録。アリババに負けじと他のEC大手も年末にかけてセールを実施することから、中国の年末商戦は独身の日を境に加熱していく。

 日本からの越境EC事業者にとっても、独身の日は年に一度のかき入れ時だ。キリン堂HDの2015年の売上高は4億~5億円だったという。

 同社は今年、新たにデジタルマーケティングを積極的に仕掛ける。策の一つがPCやスマートフォンから利用できる割引クーポンの配布だ。昨年は補助的にしか配っていなかったが、今年はメーンの販促策と位置付ける。

 加えて、送料無料で日本から商品を直送するなど、「お客様に利益を還元するセールにする」(越境EC事業を担当する、キリン堂の伊藤雄喜新事業開発部・通販ネットビジネス部長)。過去3年間で蓄積した、50万人分の顧客データを活用し、顧客の嗜好や興味を分析してメーカーと販促策も練っていくという。