2017年11月8日、アマゾンジャパンがスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの日本語対応版の発売を発表した。併せて、「スキル」と呼ばれるAmazon Echoの機能を開発するためのフレームワーク「Alexa Skills Kit(ASK)」と、Alexaの機能を外部端末で利用できる「Alexa Voice Service」の国内での提供開始も発表した。

 一連の発表で特に目を引いたのが、日本国内におけるASKの開発パートナーの数だ。開発パートナーは、Amazon Echoを利用したサービスを主に自社の顧客向けに提供する目的でスキルを開発する。ユーザーは、Amazon Echoで自分が使いたいスキルを有効にして利用する。自宅で銀行口座の残高を照会したり、企業の商品を注文したりといったことがスマートスピーカーでできるようになる。

 今回、アマゾンは製品発売前に100以上の開発パートナーを集めた。米グーグルの「Google Home」やLINEの「WAVE」など、国内販売で先行した競合他社のスマートスピーカーと比べて桁違いの多さである。顔ぶれも金融、製造、流通、公共と幅広い。例えば江崎グリコ、サントリーホールディングス、資生堂ジャパン、JTB、シャープ、全日本空輸、東急ハンズ、東京海上日動火災保険、東京電力エナジーパートナー、日産自動車、NTT西日本、日本航空、日立製作所、みずほ銀行といった大手企業が並ぶ。

 スマートフォンでは、開発パートナーによるアプリ開発が広がった「iPhone」が多数のユーザーを獲得した。それと同様に、スマートスピーカーにおいても拡張する機能の数がユーザー獲得競争に有利に働く。開発パートナーが増えるほど多数のスキルの開発が期待できる。スキルが増えればスマートスピーカーの利用シーンが広がるので、ユーザーにとっての魅力も高まる。

 11月8日の発表会見でも、アマゾンが開発パートナーの多彩さを最大限に印象付けようとしていることがうかがえた。例えば競合他社が製品を発表する直前の10月2日、同社はAmazon Echoを2017年中に発売すると報道発表したものの、その時点で明らかにした開発パートナーは10社にとどまっていた。1カ月あまり後の本番の会見では、一気に10倍に増やしてみせたわけだ。

 さらに、日産自動車やサントリーホールディングスのような他社製品にいない開発パートナーの名を強調。スキル紹介のデモンストレーションも、現時点ではAmazon Echo向けだけを提供するJapanTaxiのタクシー手配スキル「全国タクシー」を選んでいた。

日本における主なAlexa Skills Kitの開発パートナー企業を紹介する様子
日本における主なAlexa Skills Kitの開発パートナー企業を紹介する様子
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業務利用を想定したスキルは見当たらない

 これら100以上のパートナーが開発したAmazon Echo向けのスキルは11月8日時点で265。発売前からバラエティに富んでいる。ただし、家庭での利用を想定したスキルばかりで、公共の場や店舗などでの業務利用を想定したようなスキルは見当たらない。

 発売から3年が経過する米国でも、業務での利用は限られるもよう。会見では、ラスベガスのホテルが客室に設置した事例や、スポーツ競技場で飲食の注文を受け付ける仕組みに使われている事例を紹介するだけにとどまった。

 これは、Amazon Echoが家庭向け製品だからという面が大きいものの、それだけでもなさそうだ。業務用途を想定した場合、スキル開発のハードルが上がることも原因とみられる。