日本IBMは2017年11月1日、クラウドサービス「IBM Cloud」を一定範囲内で無料・無期限で使えるようにした新たな会員制度「ライト・アカウント」を始めた。米国や英国などで2017年夏から提供していた施策を日本など他の地域にも広げた。

 無料枠を設けた機能は25種類。人工知能(AI)サービス「Watson」が備えるAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)のうち対話や多言語翻訳など6種類と、ソフトウエア実行環境、開発保守ツールなどだ。日本IBMの三沢智光専務執行役員は「利用用途は問わない。WatsonやIBMCloudをビジネスにどう使えるか、幅広い開発者に試してほしい」と話す。

 IBMが新施策で意識するのは、クラウドで先行する米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と、AI開発で競う米グーグル、米マイクロソフトだ。IBMを含む米大手4社は法人向けAI事業の主戦場をクラウドサービスと位置付けて、機能と普及施策で競い合う。

主要なクラウド/AIベンダーの無料お試しAIサービス
主要なクラウド/AIベンダーの無料お試しAIサービス
4社は「お試し無料枠」でも競う
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出遅れを挽回できるか

 AIサービスの機能で比べると、グーグルは多言語翻訳や画像認識など自社のWebサービスで実績ある機能と同等のものを企業向けに提供。マイクロソフトは約30種類とラインナップで勝負し、IBMは性格分析など他社にない独自性を前面に出す。

 「無料お試し」では、従来1カ月限定のアカウントしかなかったIBMが他の3社より見劣りしていた。マイクロソフトは顔認証など3種類を、グーグルは画像認識など4種類の機能を、それぞれ範囲内であれば無期限で無料提供していた。AWSの無料期間は12カ月だが、お試しでは十分といえる。

 IBMは挽回に向けて「会員登録時のクレジットカード番号の入力を不要にした」(三沢専務執行役員)。競合3社は入力が必須だ。IBMは「導入のハードルを可能な限り下げた」(同)ことで、大企業の利用部門や中堅中小企業を幅広く取り込む狙いだ。