江崎グリコは20億円を投じて生産管理システムを刷新する。2020年中にも商品や配送先別に製造原価をきめ細かく管理できるシステムを構築する。これに先駆け2017年6月には、商品の売れ行きを予測する「需要予測エンジン」や生産現場のデータを収集するシステムを稼働させた。一連のシステムを駆使して販売実績や広告効果などのデータを基に売れ行きを予測。作り過ぎや値下げによる損失を防ぐ。生産現場の見える化を徹底して廃棄ロスも減らす。稼働から3年間でシステム投資以上の成果を目指す。

江崎グリコの生産管理システム刷新の概要
稼働時期主な機能
2017年6月部門間で生産に関する情報を共有するデータベースと需要予測エンジンを構築
生産ラインに設けたPCを使った生産現場の見える化
2019年以降IoT(インターネット・オブ・シングズ)技術を使った生産実績データの自動収集の検討
2020年中商品や配送先別のきめ細かい原価管理

 6月に稼働させた需要予測エンジンは、サプライチェーンを構成する各部門が一貫した計画を立てるのに使う。ある商品の直近数週間の販売実績データに加え、類似商品の販売実績、営業部門の販売目標、マーケティング部門が実施した特売セールの投資対効果といったデータも加味する。

 需要予測エンジンの稼働に合わせて、需給計画を立案する専門部署を新設した。新部門は営業や生産、マーケティングの各部門と需要予測などのデータを共有して販売計画を立てる。データに裏付けられた販売計画を基に、生産計画を立てたり広告宣伝活動を実施したりする。

 「営業担当者の勘とがんばりで売るのではなく、客観的なデータを基に販売計画を合意する仕組みを整えた」。飛田周二常務執行役員SCM本部長はこう語る。

 効果は表れ始めている。6月の稼働以降、賞味期限の3分の1を過ぎて値下げされる「ロットアウト品」が減り始めたという。従来は営業部門の売り上げ目標を基に生産計画などを立案していたため、少しでも多く売りたいという「営業担当者の意思」(飛田常務執行役員)が入る余地が大きく、在庫が過剰になりがちだった。