ユーザー企業のハイパーコンバージドインフラストラクチャーの導入が相次いでいる。以前から採用が多かった仮想デスクトップ環境に加えて、最近はサーバー仮想化環境やデータベースなどにも用途が広がっているためだ。大手金融機関が高い機密性を求めるシステムの基盤に導入する事例も出てきた。

 サーバー仮想化環境や共有ストレージを1台の筐体に統合したアプライアンスのハイパーコンバージドインフラストラクチャー(以下、HCI)。共有ストレージの機能をソフトウエアで実現し、安価にシステムを構築しやすい点などが評価され、ユーザー企業の採用が広がっている。例えばカブドットコム証券やオリックス生命保険といった、システムに高い信頼性を求める大手金融機関が採用を明らかにした。

 市場調査会社の予測も、こうした動向を裏付ける。IDC Japanは8月、「国内コンバージドシステム市場予測、2016年~2020年」を公表。2016年のHCIの国内市場規模は前年比105.5%増と2倍以上の勢いで成長し、90億円を突破すると予測する(図1)。

図1●ハイパーコンバージドインフラの国内市場規模
図1●ハイパーコンバージドインフラの国内市場規模
2016年は2015年の実績と比較して2倍以上伸び、90億円強に達する。IDC Japanの「国内コンバージドシステム市場予測、2016年~2020年」を基に作成した
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 コンバージドシステム市場とはHCIに加えて、サーバーやSANストレージ装置などの専用機を組み合わせた従来型のコンバージドインフラストラクチャーなどを合計したもの。市場規模は従来型のほうが400億円弱となお大きいが、前年比はほぼ横ばい。HCIの急成長ぶりがうかがえる。

 HCIの販売代理店のベンダーも、導入が広がっていると指摘する。例えば米Nutanix製HCIの販売代理店である東京エレクトロンデバイスは、「2016年は前年比3~4倍の引き合いがある」(CN第二営業本部 コーポレートアカウント営業部 香月裕司氏)。

小規模導入のニーズにぴったり

 導入が急速に進む背景には、用途の広がりがある(図2)。これまでHCIは仮想デスクトップ環境への適用がほとんどだったが、最近では「一般的なサーバー仮想化環境の拡張やリプレースの際の有力な選択肢としてIT部門が検討している」(IDC Japan エンタープライズ インフラストラクチャ マーケットアナリスト 宝出幸久氏)。特にセキュリティ上の理由などでパブリッククラウドに出せないシステムを運用する企業から引き合いが増えている。

図2●用途の広がりが顕著に
図2●用途の広がりが顕著に
以前であれば仮想デスクトップ環境への適用が目立っていたが、最近はサーバー仮想化環境全般への採用が増え、さらには高いI/O性能を必要とするデータベースにも適用されるようになってきた
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 また、東京エレクトロンデバイスの渡辺 潤氏(CNカンパニー CN技術本部 クラウド技術部 DC&SP技術グループ)は、「オールフラッシュ構成の選択肢が増えてきたことも、用途の拡大につながっている」と話す。例えば、高いI/O性能が必要なデータベースの基盤に採用する企業が増えつつある。