クラウドサービスを提供する事業者にとって、増大する運用負荷への対応が課題となっている。新システムの構築や基盤刷新の際に、パブリッククラウドを第一の選択肢とする方針を打ち出す企業が相次いでいるのが理由だ。

 課題解決のために各事業者が注力するのが、運用業務の自動化だ。例えばNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器をソフトウエアにより仮想化することで、遠隔での一元制御を可能にしている(関連記事:NTTコムの庄司社長、IoT基盤サービスなど今後のクラウド戦略を説明)。

 NTTコムの庄司哲也社長によると、「対人でトラブル対応するのに数日~数週間かかっていたのが、顧客側での操作や自動化での対応により、低価格かつ数分で済む」とのことだ。

 ヤフーの100%子会社でデータセンター事業やクラウド事業を手掛けるIDCフロンティアも、自動化による運用業務の効率化や強化を進めている。

 データセンター管理の最前線を知るため、東京都新宿区にあるIDCフロンティア本社内の監視センターを取材した(写真1)。ここでは、同社が運営する日本各地のデータセンターで稼働中の顧客のサービス状況を、一元管理している。

写真1●東京都新宿区にあるIDCフロンティア本社内の監視センター
写真1●東京都新宿区にあるIDCフロンティア本社内の監視センター
(出所:IDCフロンティア)
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 IDCフロンティアは2014年10月に、月額500円から使えるクラウドサービスの「IDCFクラウド」を提供開始した。IDCフロンティア カスタマーサービス本部 カスタマーリレーション部 テクニカルサポート第1グループ グループリーダーの宗宏一氏によると、「これまでのところ好評で、従来のサービスよりも早いペースで顧客が増えている」という。

 需要の高まりに呼応して、データセンターを拡充してきた。最近では2015年9月に、福島県白河市にある白河データセンターで、新たに3号棟を建設すると発表している(写真2)。

写真2●IDCフロンティアの白河データセンターの外観
写真2●IDCフロンティアの白河データセンターの外観
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 それでもIDCFクラウドのサービス提供開始前後で、データセンターの運用担当者数は大差ないという。監視オペレーターは、各拠点に10人弱が常駐する。拠点内で実際の運用業務をこなす担当者は全拠点で50人程度だ。ほぼ同じ人員でサービス提供の速度や品質を向上するため、IDCフロンティアは運用体制の強化や自動化に着手した。