自然な言葉でユーザーと対話するチャット(会話)ボット。米アップルの「Siri」、米グーグルの「Googleアシスタント」、米マイクロソフトの「Cortana」などスマートフォンやPCの機能の一つとして提供されてきたが、企業のマーケティングへの応用が始まっている。

 毎日放送(MBS)は2017年8月、同社の番組宣伝キャラクターである「らいよんチャン」をチャットボット化した「おしゃべり らいよんチャン」の提供を開始した。LINEのユーザー向けに、番組の宣伝やイベントの告知といった情報発信をするのに加え、双方向のコミュニケーションを実現している。

左からアイレットの比企宏之cloudpack事業部セクションリーダーソリューションアーキテクト、毎日放送の水野善雄Mビジョン推進局PR部マネージャーと菊地崇Mビジョン推進局PR部副部長、アイレットのcloudpack事業部に所属する田中潤氏と山本貴裕氏
左からアイレットの比企宏之cloudpack事業部セクションリーダーソリューションアーキテクト、毎日放送の水野善雄Mビジョン推進局PR部マネージャーと菊地崇Mビジョン推進局PR部副部長、アイレットのcloudpack事業部に所属する田中潤氏と山本貴裕氏
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 同システムはLINEでチャットボットを作成するための「Messaging API(通称LINE BOT)」、パブリッククラウドのAmazon Web Services(AWS)の各種サービスをベースに、Microsoft Azureの自然言語認識AI(人工知能)サービスを組み合わせた。AzureのAIサービスを組み合わせたのは、AWSが日本語対応の自然言語認識AIサービスをまだ提供していないためだ。

 AWSおよびAzureのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を積極的に採用し、仮想マシンを一切使わないサーバーレスの構成にした。PaaSはクラウド事業者が運用の大部分を代行するマネージドサービスであるため、仮想マシンを使った場合のシステム構成と比べて、インフラの運用・保守コストを大幅に削減できたという。システムインテグレーターが開発中だったパッケージをカスタマイズして、約2カ月で開発した。

おしゃべり らいよんチャンの画面(左)と、LINEでの友達申請用のQRコード
おしゃべり らいよんチャンの画面(左)と、LINEでの友達申請用のQRコード
(出所:毎日放送)
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きっかけは番組宣伝システムの刷新

 らいよんチャンのボットシステム開発のきっかけとなったのは、出版社などとテレビ番組の宣伝用の情報共有などを行う番組宣伝システムの刷新だ。現行の番組宣伝システムは、国内ベンダーのパブリッククラウドのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)上で番組宣伝パッケージを動かしたもの。「コスト削減が課題だった」(菊地崇Mビジョン推進局PR部副部長)ため、他のパブリッククラウドでのシステム刷新を検討していた。

 そのとき毎日放送では、クラウド上のシステムの開発や運用保守を主力とするアイレットとともに、定額制の有料動画配信サービス「MBS動画イズム444」のシステム基盤をAWS上に構築中だった。らいよんチャンを担当していた、毎日放送の水野善雄Mビジョン推進局PR部マネージャーがアイレットの担当者と話す機会があり、「番組宣伝システムの刷新と合わせて、らいよんチャンのチャットボットを開発してはどうかという提案を受けた」という。当時、アイレットはLINEを使ったチャットボットのパッケージを開発中だった。