音楽の再生はもちろん、ネット上の検索、ニュースの読み上げ、利用者のスケジュール管理、スマート家電の遠隔操作など、スピーカーに話しかけるだけでさまざまなことができる「スマートスピーカー」。各社が開発を進めてきた製品が、国内でも2017年の年末商戦で店頭に並ぶ見通しとなり、早くも激戦の様相を呈している。

図 国内で発売中もしくは発売予定の主なスマートスピーカー
図 国内で発売中もしくは発売予定の主なスマートスピーカー
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 米グーグルや米アップル、LINEなどの提供元はそれぞれが提供する既存サービスにひも付いたアカウントを持つユーザーを数多く抱えており、スマートスピーカーの投入でその関係を一段と強固なものにしようとしている。さらに独自の付加機能を実装しようと、パートナー企業の開拓や囲い込みでもしのぎを削る。

グーグルはパートナー開拓で先行

 先行したのはグーグルとLINEだ。

 「自然言語処理や機械学習などを組み合わせて、自然な会話の中であなたの知りたいことをサポートします」。グーグル日本法人の徳生裕人製品開発本部長は2017年10月5日、都内で開催した記者会見でそう力強く語り、スマートスピーカー「Google Home」の日本発売を発表した。

 グーグルの強みは2点。一つはスマホ向けに展開してきた音声認識によるコンシェルジュサービス「Googleアシスタント」を同製品に横展開するなど、同社が持つ豊富な日本語の音声認識技術のノウハウだ。同製品では、家族の声を聞き分けてそれぞれのGoogleアカウントに紐付いた情報を提供する機能もある。

 もう一つはパートナー企業の多さである。動画・音楽などのコンテンツ配信は5社7サービス、ニュースの読み上げは11社、スマート家電やスマートホームの遠隔制御では5社とそれぞれ提携。今後、レシピやレストランの検索なども計10社と提携して提供する。

 一方のLINEもGoogle Homeと同じ10月5日に、スマートスピーカー「Clova WAVE」を同日から発売すると発表。8月から一部ユーザーに先行体験版を提供し、ユーザーからの意見を踏まえて改良を施してきた。それを基に、同製品専用のLINEアカウント「家族アカウント」を用意。家庭内の各個人が持つLINEアカウントのプライバシーは守りつつ、同製品でLINEのメッセージを気軽に送受信できるよう配慮した。

 テレビやエアコン、照明などの操作では、日本の家庭の実情に合わせて同製品に赤外線リモコン機能を内蔵し、幅広い製品に対応できるよう準備している。さらに「サードパーティ向けにSDK(ソフトウエア開発キット)を開発中で、2018年初頭にも提供する」(舛田淳取締役)ことで、パートナー企業の呼び込みを図る。

 このほか、米国市場でいち早くスマートスピーカーを市販した米アマゾン・ドット・コムも、2017年内に「Amazon Echo」を日本で発売予定。ソニーも2017年8月に欧州の展示会で、Googleアシスタント対応のスマートスピーカーを発表しており、12月にも国内発売されるとの観測がある。

 コモディティ化や需要一巡、総務省の販売規制などで市場が沈静化したスマートフォンに代わる機器として、スマートスピーカーには業界内の期待が集まる。それだけに各社の先陣争いも激しいものになりそうだ。