海外ベンダーに押され気味のクラウド分野で、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が巻き返しの一手を打った。2015年10月8日に開催した自社イベントで、同社代表取締役社長の庄司哲也氏が発表したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤サービスがそれだ(関連記事:NTTコムの庄司社長、IoT基盤サービスなど今後のクラウド戦略を説明)。

 IoT基盤サービスはデバイスやSIM、M2M(Machine to Machine)のモバイルネットワーク、VPN(仮想閉域網)サービスの「Arcstar Universal One」、クラウドサービスやサーバー設置スペースを顧客に貸し出すコロケーション、データ収集・分析基盤といった、IoT活用に必要な製品やサービスを「一気通貫で提供する」(庄司社長)ものだ(写真1)。デバイスやデータ収集・分析基盤はパートナーの製品やサービスも利用する。

写真1●2016年春の提供開始を目指すIoT基盤サービスの概要
写真1●2016年春の提供開始を目指すIoT基盤サービスの概要
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 例えば製造業の場合、工場の機器に温度などの各種センサーを取り付けてデータを収集する。多数の機器から集めたビッグデータを分析し、機器の保守などに生かすといった用途が考えられる。

モバイルネットワークとAUO間の接続は無料

 最大の強みはセキュアかつ低価格のM2M通信だ。Arcstar Universal One(AUO)を使うことで、センサーなどを取り付ける各種デバイスとの通信はインターネットを経由せずに済む。しかも、デバイスからデータを送受信するモバイルネットワークとAUO間の接続料は無料だ(AUOの月額利用料や、AUOからクラウドやコロケーション間の通信料は別途必要)。

 クラウドを活用したIoT分野では、新サービスの登場が相次いでいる。ソラコムが2015年9月30日に提供開始したIoT機器向け格安通信サービスの「SORACOM Air」(関連記事:IoTに格安通信、ソラコムが機器用SIMをクラウド活用で8割安に)や、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が2015年10月8日(米国時間)に提供を始めたIoTアプリ構築向けサービスの「AWS IoT」(関連記事:IoTアプリ構築向けの「AWS IoT」が登場、100万メッセージで8ドルの従量課金)などだ。

 SORACOM Airの場合、通信料金の体系はデータ通信量に応じた従量課金制で、データ転送量1メガバイト当たり0.2円から(SIMの基本使用料が1枚当たり1日10円)だ。AWS IoTの利用料金はメッセージ数に応じた従量課金で、東京リージョン(データセンター群のAWSの呼称)の場合は100万メッセージ当たり8ドルになるという。

 NTTコムのIoT基盤サービスの場合、データ収集・分析基盤の利用料などは現時点では不明だが、少なくともモバイルネットワークとAUO間の接続に追加料金は必要ない。