自動車IoT(Internet of Things)ベンチャーのグローバルモビリティサービス(GMS)は年内にも、日本でIoTを活用した自動車リースサービスを始める。車両情報の収集とエンジンの遠隔制御機能を備えたIoT機器を活用。消費者は煩雑な与信審査を経なくても、携帯電話のように月額払いで自動車を利用できる。既にフィリピンで同様なサービスを始めた(写真1)。クルマを買わない日本の若年層とクルマを買えない新興国の低所得層、それぞれに向けた事業モデルを創る。
「電気自動車(EV)を普及させるには、モノを売り込むのではなく社会に必要とされるEVのあり方や仕組みを提案する必要がある」。こう語るのはGMSの中島徳至社長だ(写真2)。中島社長はこれまでEV開発ベンチャーを立ち上げた経験を持ち、電気自動車普及協議会の代表幹事も務める。
中島社長率いるGMSの事業は、EVをはじめとする自動車や農機、建機向けのIoT機器とデータ収集のクラウドサービス、これらを活用した自動車サービスの開発だ。IoT機器は車両に取り付けて稼働状況を管理するためのもので、車両の走行距離や速度、燃費、ブレーキの状況、位置、走行経路などの情報を集める。エンジンのオンとオフを制御したりアクセルの踏み込みを抑えたりといった機能も備える。利用者ごとの利用金額や入金状況、利用期間などはクラウドで管理する。IoT機器には格安通信を提供するベンチャー、ソラコムのサービスを使う見通しだ(関連記事: IoTに格安通信、ソラコムが機器用SIMをクラウド活用で8割安に)。
クルマが売れない時代に売る仕組みを
GMSはこの仕組みを使い、2015年内にも日本で新たな自動車リース事業を始める。ポイントは独自開発したIoT機器とクラウドサービスを使って、提供する車両の稼働状況や利用者の課金情報を一元管理することだ。
第一の顧客として想定するのは20~30代の若年層。「クルマ離れ」の中心とされる年代層だ。「クルマが売れない今の時代、自動車メーカーも損害保険会社も売る仕組みを探している。IoTとクラウドを使って、売れる仕組みを創る」(中島社長)。
若年層にクルマの利用を促す第一のポイントは、携帯電話感覚でクルマを利用できるようにする料金体系だ。損害保険会社やリース会社などと組み、稼働状況を管理するIoT機器を取り付けたEVを利用者に提供する。利用者は週単位や月単位の料金を支払う。
もう一つのポイントが、自動車リースの入り口である与信審査の手間を減らすことだ。利用者からの料金支払いが滞ったら、ネット経由でIoT機器に命令を送って車両を停止。利用者のスマートフォンへ通知を送り、料金支払いを促す。それでも支払わない場合にはIoT機器の位置情報を基に、車両を回収する。こうした仕組みを整えておくことで、「ローンの与信審査の省略と資産保全を両立する」(中島社長)。