写真●中国への越境ECを支援する
写真●中国への越境ECを支援する
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 訪日外国人の急増をにらんだネット企業の動きが活発化している。翻訳サービスのGengoは訪日客によるサイト閲覧需要増で業績が好調。米ペイパルは中国へのEC事業者進出を支援する。リクルートグループは中国の決済最大手「Alipay(アリペイ)」のサービスを国内飲食店に広げる。日本市場に押し寄せる中国人をいかに自社の売り上げに結びつけるか。ネット各社の動きは激しさを増しそうだ。

 低価格の翻訳サービスを手がけるGengoは、ここ数年、毎年売り上げが倍増している。同社は世界138カ国に1万5000人の翻訳者を持つクラウドソーシング事業者。対応する言語は37カ国語に達し、うち32カ国語で双方向の翻訳を可能にしている。

 同社の売り上げ促進の背景にあるのは訪日外国人観光客の増加だ。「メディア業界、トラベル業界、EC(電子商取引)業界からの受注が急増している」。Gengoでマーケティングコミュニケーションディレクターを務める梅内望未氏が明かす。外国人は訪日前にメディアを閲覧し、旅行の予約をし、訪日して帰国した後にECでモノを買う。当然、ウェブサイトやメニュー、商品などの紹介など、言語を翻訳しなければならない。まさに訪日外国人による効果がてきめんに表れている状況だ。

 日本政府観光局の調査によると2014年の訪日外国人者数は1341万人。2011年の620万人から4年連続で急伸し、2015年には2000万人に達する可能性まで出てきている。その中でも急増しているのが中国人観光客だ。純粋に観光目的で来ている中国人者数は2014年時点で約175万人。前年比で148.8%増という驚異的な伸びを見せている。

「爆買い」狙うPayPal、「爆食い」狙うリクルート

 米ペイパルは2015年10月21日から、日本のEC事業者を対象とした中国市場向け越境EC支援事業を始めることを決めた(写真)。2010年から同社のデジタルウォレット「PayPal」で利用可能になっている銀聯(ぎんれん)を中国の消費者向けに再度訴求し、PayPalの利用者拡大、および日本のPayPal導入企業の売り上げ拡大を支援する。中国人観光客の増加による“爆買い”効果を、帰国後のEC購入にも波及させたい考えだ。

 ペイパルが開始するプログラムは「ペイパル・チャイナ・コネクト」。既に米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、シンガポールで実施しており、銀聯国際、中国建設銀行、平安銀行、口コミサイトのSMZDMなどと組み、中国消費者向けに日本のEC事業者の商材の訴求する。今後、中国でのパートナー企業を拡大していく予定だ。