IoTの技術を活用した稼働監視サービスが、コマツのような大手のみならず、日本のものづくりを支える中堅企業にも広がりつつある。

 工具メーカーの東洋空機製作所の販売部門を出自とし建機アタッチメントなどの販売と保守を手がける東空販売は、パワーショベルの先端に取り付ける油圧ブレーカ向け稼働監視システム「TO-MS(トムス)」を安川情報システムらと開発した。2018年前半の提供を目指す。IoTで製品に付加価値を付け、低価格で攻める海外勢に対抗する。

稼働データを無線でクラウドに集積
稼働データを無線でクラウドに集積
図●東空販売の油圧ブレーカ稼働監視システム「TO-MS」の概要
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 TO-MSを搭載した油圧ブレーカの価格は1割ほど高くなるが、故障時期を予測して修理や部品交換などを促すことで、建設会社などの顧客は総コストを1割は減らせるという。

 故障予測を基に事前に修理することで、工事の遅延を防げる利点もある。東空販売の柘植一慶専務執行役員は「油圧ブレーカの故障は工事の遅延に直結する」と語る。油圧ブレーカは建機本体から脱着して使うため、建機本体と異なり稼働時間や稼働状況を把握しにくい。このため建設会社は修理のタイミングをつかめず、突然の故障で工事の遅延を招きがちだった。

東空販売の柘植一慶専務執行役員
東空販売の柘植一慶専務執行役員
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 メリットはこれだけではない。無線IDタグ(RFID)を油圧ブレーカに取り付けることで、レンタル業者は入出庫管理を省力化することも可能になる。

深層学習で異常を判断

 多くのセンサーを備える建機本体と比べ、建機アタッチメントは取得できる情報が乏しい。そこで東空販売は油圧センサーと加速度センサーを建機に取り付け、無線経由で建機キャビン内のIoTゲートウェイ端末にデータを送信できるようにした。摺動部品を支えるブッシュが擦り減ったり作業員が不適切な使い方をしたりすると、センサーの波形に特徴が現れる。時系列データから、稼働が正常か異常かを深層学習の技術で判別する。判別の正答率は90%以上という。