日本郵船や商船三井など海運大手がIoT(インターネット・オブ・シングズ)の本格活用に乗り出した。日本郵船は2017年9月19日、NTTやNTTデータと共同で船舶向けIoTプラットフォームの実証実験を始めると発表。2018年夏ごろまで続け、早期の実用化を目指す。商船三井は2017年末に完成予定の2隻の運航船に、メインエンジンと発電機の状態監視システムを搭載すると7月21日に発表。両社ともにIoTで運航のコスト削減や安全向上を図る。

 日本郵船はシステム子会社のMTIと2008年から船舶情報管理システム「SIMS(Ship Information Management System)」の開発を進めてきた。SIMSはメインエンジンや発電機などの機関系データや、船の位置や風向きといった航海系データなど船舶のビッグデータを収集・分析し、陸上の管理担当者と船舶の乗員との間で共有してきた。

 実証実験は、SIMSとNTTのエッジコンピューティング技術などを組み合わせ、船舶向けの新しいIoTプラットフォームを開発するのが狙い。これにより、船上のアプリケーションを強化し、様々な機器からよりたくさんのデータを集めて詳細な分析が可能になる。船体が波からどういう影響を受けるかなど、今は取れていないデータも分析できるようになり、「船をより賢くできる」(MTIの船舶技術部門の安藤英幸部門長)。

図●日本郵船の船舶IoTの仕組み
図●日本郵船の船舶IoTの仕組み
(写真:日本郵船)
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 船舶IoTにエッジコンピューティング技術は効果的だ。陸に比べて船上の通信環境は良くないため、船上で実行できるデータ処理などを増やすことで、陸上にもスムーズにデータを送ることができる。