改正個人情報保護法の目玉の1つが「匿名加工情報」。個人データを加工し、本人の同意なしに企業が活用できるようにする。同情報の活用に名乗りを上げる企業が登場し始めた。

 匿名加工情報の利用を表明している1社がシーディーアイ(ケアデザイン研究所)だ。2017年4月に産業革新機構や介護サービス大手のセントケア・ホールディングなどが出資して設立、要介護者の自立を支援する介護サービス利用計画(ケアプラン)を作成する人工知能(AI)の実現を目指している。

 ケアデザイン研究所の岡本茂雄社長は「今まで職人芸の領域だったケアプラン作成の品質をAIで高められる」と期待する。同社はセントケアが厚生労働省の助成を得て進めているAI活用ケアプラン作成の調査研究や実証事業を担う。AIの学習目的で、特定の個人を識別できないように加工し、元の個人情報を復元できないようにした匿名加工情報として、利用者データをセントケアなどから受け取る。

 ケアデザイン研究所は匿名加工情報を基にAIの教師データを作成し、再び匿名加工情報として共同開発元の米アクティビティ・レコグニションに提供している。ケアデザイン研究所とセントケアは匿名加工情報取扱事業者として同情報を扱う旨を公表している。

 匿名加工情報には性別や年齢、要介護度状態区分、既往歴、住居環境、サービス利用状況などが含まれる。同情報の作成指針を策定する認定個人情報保護団体はなく、個人情報保護委員会のガイドラインに従い加工したという。

匿名加工情報の例
匿名加工情報の例
[画像のクリックで拡大表示]

 ケアデザイン研究所は匿名加工情報の活用を決めた理由について「AI向けの教師データは個人を特定する必要がないためうってつけ。過去にさかのぼって介護サービス利用者からデータ提供の同意を得るのは現実的ではないこともあり判断した」と説明する。