2017年9月30日、東京・両国で公開討論会「Excel方眼紙公開討論会」が開かれた。Excel方眼紙とは、表計算ソフトのMicrosoft Excelを方眼紙に見立ててワープロのように使う手法を指す。集計やプログラム処理が困難とされるExcel方眼紙は、本当に使うべきではない「悪」なのか。否定派と肯定派が講演とパネルディスカッションを繰り広げた。

 討論会は、ソフトウエア部品を手がけるグレープシティが主催したもの。同社はExcel方眼紙のような体裁のWebページをデータベースを基に生成するWebアプリケーション開発環境「Forguncy」を販売中だ。発案者の八巻雄哉 Enterprise Solutions事業部プロダクトマネージャは、討論会開催の動機を「Excel方眼紙が苛烈に攻撃されるのはなぜなのか。実際はサイレントマジョリティーではないのか。リアルな場での議論を通じて明かしたかった」と話す。

紙文化が生んだ「ネ申Excel」

 討論会の口火は、否定派として講演した立命館大学の上原哲太郎 情報理工学部教授が切った。上原氏は和歌山大学や京都大学、NPO法人や総務省で情報化に携わった、システム管理やセキュリティの専門家だ。

Excel方眼紙「否定派」として講演した立命館大学の上原哲太郎 情報理工学部教授
Excel方眼紙「否定派」として講演した立命館大学の上原哲太郎 情報理工学部教授
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 上原氏はExcel方眼紙が出始めた背景にあるのは、1990年代後半からExcelがパソコンのプリインストールソフトとして普及し「表計算ソフトを表印刷ソフトとして使うユーザーの増加」(同氏)があると指摘。連絡文書や紙の帳票を模したExcelが自身のメールボックスに飛び込んでくるようになったという。

 NPO時代に上原氏が受け取った、紙の帳票を模したExcel方眼紙は、謝礼を受け取る振込先を入力するファイル。Excel方眼紙、それも1マス1文字で入力にも支障をきたす、いわゆる「ネ申Excel」だった。「そのおかしさを指摘するとともにデータベースとして機能する入力シートに仕立てたExcelファイルを返信した」(同氏)という。

上原氏が実際に受け取ったExcel方眼紙
上原氏が実際に受け取ったExcel方眼紙
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 「ネ申Excel」は、紙文化をExcelに持ち込んだことでデータ解析に支障を来している問題を三重大学の奥村晴彦教授がTwitter上で指摘し、上原氏とやり取りする中でネットに広まった呼び名だ。見た目は「神」だがデータとしては「ネ」と「申」になり、人にはともかくプログラムからは別物になる。

 上原氏は、主に官公庁などに向けて「紙を信じているから神Excelが流行る」としてボトムアップで根絶を求める声を上げていたところ、神Excel問題が当時自民党の行政改革推進本部長だった河野太郎衆議院議員の目にとまり、2016年11月に文科省に全廃指示を出すなど「思わぬ援軍」(同氏)があったという。個人でもできる解決策として上原氏は「データと体裁の分離を解説する」「入力や集約が目的ならWebシステム化やマクロを薦める」「集めたExcelファイルをただ受け取っているだけなら、せめてチェックはしているのか、その仕事は必要なのかを問いかける」などの運動を挙げた。

Excel方眼紙をなくすための提言
Excel方眼紙をなくすための提言
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