GMOクリック証券は2016年8月18日、証券業界で初めて顧客がマイナンバーカード(個人番号カード)を使って、口座開設手続きをオンラインで完結できるようにすると発表した。サービス開始時期は、決まり次第公表するという。証券や携帯電話の仮想移動体通信事業者(MVNO)などの業界で、マイナンバーカードの内蔵ICチップに搭載された公的個人認証サービス(JPKI)の利用が広がる可能性がある。

 GMOクリック証券が採用したのは、「マイナンバー制度対応オンライン本人確認サービス」。インターネットのサーバーの電子証明書を扱う、グループ会社であるGMOグローバルサインが構築した。GMOグローバルサインがオンライン本人確認サービスで当初のメーンターゲットとしているのは、ネット証券だ。

 2016年1月に開始したマイナンバー制度では、希望者に交付されるマイナンバーカードを使えば、インターネットで本人であるかどうかを確認できる。JPKIは、マイナンバーそのものは使わず、個人情報もひも付けない。カードを所持している事実と、パスワードの入力で本人だと確認できる。

 GMOグローバルサインは、JPKIの利用に必要となるセキュリティ対策などの基準を満たしたクラウドサービスを企業に提供する「プラットフォーム事業者」の1社だ。ほかには、NTTコミュニケーションズなど計7社が、2016年9月14日までにプラットフォーム事業者に認定された。

 JPKIのうち署名用の電子証明書では、転居などで住民票に記載された内容が変更されると失効する()。証券会社などが電子証明書の有効性を確認できれば、常に顧客の最新で正確な公的情報に基づいた本人確認ができる。

図●マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)による本人確認のフローイメージ
図●マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)による本人確認のフローイメージ
(出所:GMOグローバルサインの資料をもとに作成)
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 利用者がカードリーダーをパソコンにつないで利用すれば、なりすましやデータの改竄のリスクを最小限にした上で手続きが可能だ。2016年秋に発売される、モデルの一部のAndroid端末でも、NFCを通じて使える見通しだ。

 これまでネット証券会社などの金融機関は、書類の送達確認によって法律で義務付けられた本人確認をしてきた。顧客に運転免許証のコピーなど本人確認書類のアップロードや郵送を依頼して、記載された住所に取引口座のユーザーID・パスワードを知らせる書類を送るケースが多い。しかし、これでは手続きが完了するまでに一週間程度かかる。

 特にネット証券会社にとっては、顧客が口座開設の申し込みをして金融取引を始めたいという動機を持った瞬間を逃したくない。一週間後に書類が届いては、顧客が興味を持ったタイミングで取引ができず、書類が開封されずに放置されてしまう恐れがあるからだ。