2014年8月、NECが太平洋横断の光海底ケーブル敷設プロジェクトを立て続けに手中にした。一つは米国西海岸と日本を結ぶ総延長約9000キロメートルの「FASTER」で、世界最大規模となる毎秒60テラビットの伝送速度を実現する。

 もう一つは、米国と東南アジアを直結する光海底ケーブル「SEA-US」で、総延長約1万5000キロメートル、毎秒20テラビットとなる予定だ(図1)。二つの総建設費は約5億5000万ドル(約560億円)に上る。いずれも2016年の稼働を見込む。

図1●米国西海岸と日本を結ぶ総延長約9000キロメートルの「FASTER」と米国と東南アジアを直結する光海底ケーブル「SEA-US」
図1●米国西海岸と日本を結ぶ総延長約9000キロメートルの「FASTER」と米国と東南アジアを直結する光海底ケーブル「SEA-US」
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異色の米グーグル、DC間接続が目的か

 NECによると現在、国際通信の99%は光海底ケーブルが担っているという。1995年頃は衛星通信が約5割を占めていたが、今では1%まで減っている。光海底ケーブルのシステム寿命は25年と長い。プロジェクトは、「多い場合で、全世界に年間3~4本あるかないか」とNECの増田彰太海洋システム事業部シニアマネージャーは話す。

 光海底ケーブルの敷設には膨大な費用がかかるため、通常は複数社がコンソーシアムを組織し建設委託元として、コストを分担する。今回のFASTERとSEA-USは、建設委託元が異なる。

 FASTERのコンソーシアムには、KDDIのほか、中国移動、中国電信、米グーグル、シンガポールのSingTel、マレーシアのGlobal Transitの6社が参画している。FASTER敷設の背景にあるのは、アジアの旺盛な通信需要だ。

 「韓国、日本、香港、シンガポールも大きいが、やはり中国の需要が最も増えている」(増田シニアマネージャー)。コンソーシアムの参加者も、それを反映している。FASTERは、日本と香港や東南アジアを結ぶ「SJC」などと、KDDIの千倉第二海底線中継所で接続する計画だ。

 FASTERのコンソーシアム参加企業の中で異色なのはグーグルだ。通信キャリアは大容量の光海底ケーブルを敷くことで、企業に高品質な通信サービスを販売する。しかし、グーグルの目的は他社への販売ではない。

 グーグルは各国にデータセンター(DC)を保有し、クラウドサービスなどを提供している。それぞれのDC間は大容量の通信回線で結んでいる。「主要な回線は、通信キャリアから借りるより、出資して作ってしまった方が安価と判断したのではないか」と、増田シニアマネージャーは推測する。