東京急行電鉄や日本マイクロソフト、パナソニックなど77社が、スマートホーム向けIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器の普及を図る企業連合「コネクティッドホームアライアンス」を設立した。急成長の期待が高まる家庭向けIoTだが、早くも複数の陣営が互換性のないサービスを展開し始めており、企業間の覇権争いで相互接続性の確保が後手に回っている。

 こうした状況から、「普及が進まないHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の二の舞になるのではないか」と懸念されている。HEMSの反省を踏まえ、「日本の消費者に心地良い家庭向けIoT」の実現を掲げ、目先の利益を捨てて大同団結を狙う。

自動車、商社、メガバンクなどが参画

 「消費者の暮らしを支える会社がこんなに集まった。ここから、世界に誇れるジャパンクオリティの家庭向けIoTを生み出していく」。2017年9月14日に設立総会を開いたコネクティッドホームアライアンス。発起人代表として記者会見した東急電鉄の市来利之取締役常務執行役員は誇らしげに宣言した。

 市来取締役が言うように、77社の顔ぶれは豪華だ。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの自動車大手3社を筆頭に、伊藤忠商事や住友商事、丸紅、三菱商事など複数の総合商社。NEC、NTTデータ、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、富士通などのIT大手も名を連ね、住宅・建材メーカーや不動産販売、電気・ガス、メガバンク、広告など多彩な企業が集結した。

「世界に誇れるジャパンクオリティの家庭向けIoTを生み出していく」と語る、東京急行電鉄の市来利之取締役常務執行役員(中央)らアライアンスの主要メンバー
「世界に誇れるジャパンクオリティの家庭向けIoTを生み出していく」と語る、東京急行電鉄の市来利之取締役常務執行役員(中央)らアライアンスの主要メンバー
(撮影:田中 陽菜=日経コンピュータ)
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 彼らが目指すのは、日本の消費者にとって心地良い家庭向けIoTの実現だ。アライアンスでは「住まい」「オープンシステム」「データ活用」という3つの研究会を設置。家庭内におけるIoTの具体的な用途のアイデアを出し合い、実証実験や新サービスの開発につなげるほか、相互接続性やセキュリティの担保、ビッグデータ活用のアイデアやプライバシー保護まで手掛ける計画だ。

HEMSの“失敗”は繰り返さない

 なぜこれほど多くの企業が大同団結できたのか。内情を知る手掛かりは、家庭向けIoTの“先輩格”に当たるHEMSのつまずきにある。HEMSは電気やガスなどの消費状況を見える化したり、家庭内にある様々な家電製品を遠隔制御したりする仕組みだ。2011年の東日本大震災の後、節電への関心の高まりに合わせてHEMSに期待が集まったが、一部の新築住宅を除けば、ほとんど普及していない。

 アライアンスの特別顧問を務める東京大学の野城智也教授は、HEMSの失敗には2つの原因があると指摘する。「メーカー各社のHEMS機器のプロトコルに互換性がなく、後から作られた相互接続規格もライセンス料が高かった。何より、HEMSをどう活用していくのかという用途提案が圧倒的に少なかった」。