AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などの新技術を活用したデジタルビジネス創出に取り組む企業が増えている。一方で、それらを担うエンジニアの不足が深刻化している。情報処理推進機構(IPA)が2017年4月に公開した「IT人材白書2017」では、「IoTやビッグデータ、AIなどに携わる人材」を「確保できている」と答えたユーザー企業はわずか1.6%、IT企業やネットサービス企業でも2%台にとどまる。

 そんな中、こうした技術の習得を国が後押しする制度が始動する。経済産業省と厚生労働省が連携し、両省が認定する講座の受講者に対して最大で受講費用の7割を補助する予定だ。金額の上限は年間で56万円に上る。新技術習得によるキャリアアップを目指すエンジニアにとっては、見逃せない制度になりそうだ。

主に30~40代技術者向けの実践的講座を認定

 今回のスキル習得支援は、経産省による講座の認定制度と、厚労省による雇用保険の給付制度の組み合わせによって行われる。経産省が講座のカリキュラムなどを審査し、認定。認定講座のうち厚労省が設ける要件も満たしたものについては、雇用保険の給付制度に基づいて受講費用を補助する。それぞれについて見ていこう。

 経産省による認定制度とは、2017年9月15日に申請受け付けを開始した「第四次産業革命スキル習得講座認定制度(通称:「Reスキル講座」)」。高い成長性が期待されるIT関連分野において、専門性が高く実践的なスキルが身に付けられる講座を民間から募集。要件を満たすものを経済産業大臣が認定することで受講を後押しし、技術者のスキルアップを促す。同省がIT関連の講座認定制度を設けるのは、今回が初という。

 対象分野には、デジタルビジネスに関連の深いキーワードが並ぶ。AIやIoT、クラウドといった新技術をはじめ、デザイン思考やアジャイル開発などのデジタルビジネス開発手法を組み合わせた講座も受け付ける。高度なネットワークやセキュリティに関する講座、製造や自動車など産業界でのIT活用にまつわるスキル習得を目指す講座も対象となる。

「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」の概要
「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」の概要
(経済産業省の公開資料より)
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